博物書評カテゴリーの記事

『五重塔入門』—藤森照信・前橋重二著・新潮社
『五重塔入門』藤森照信・前橋重二著(新潮社)
『五重塔入門』藤森照信・前橋重二著(新潮社)

 考えてみれば「五重塔」とはおもしろい存在だ。塔でありながら、人間が登るようには造られていないのだ(冒頭の、五重塔によじのぼった人の話を読むとよくわかる)。
 本書は、日本に現存する国宝の五重塔11塔の歴史や工法を紹介したもの。

 594年プラス数年の頃に伐採された心柱を持ち、711年に完成した、今なお謎多き「法隆寺五重塔」。焼失・再建をひたすら繰り返し続けた現6代目の「興福寺五重塔」。多雪地帯で且つ杉木立に囲まれて多湿という、こけら葺きにはかなり不利な環境にたたずむ「羽黒山五重塔」。広島県の芦田川に栄えた中世の港町・草戸千軒の全盛期に建てられ、その栄枯盛衰を見守り続けた「明王院五重塔」といったラインナップが登場。
 おのおの、塔の断面図解も添えられているので、その構造も理解しやすい。

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『世界の民家園』—岸本章著・鹿島出版会
世界の民家園
世界の民家園

 民家園は、1891年に、スウェーデンのストックフォルムに開園した野外博物館スカンセン〔Skansen〕に始まるという。スカンセンとはその土地の丘の名前で、小さな砦といった意味だそうだ。農村の民家や生活が失われていくことに危機感を抱いた言語学者アルトゥール・ハセリウスによって設立された。
 実際の民家を用いて、民族衣装や生活様式を再現する展示手法は1867年のパリ万博などにも見られるが、これを常設の博物館で実現した画期的な野外博物館〔Open air museum〕といえる。

 この展示スタイルは、北欧からアルプス以北のヨーロッパやロシアへと広がっていった。東欧では「スカンセン」という言葉自体が野外博物館を指す一種の固有名詞として使われているという。
 これらの国々が主に木で家屋を造る「木の文化圏」であったことは興味深い。石造に比べて木造はうつろいやすい。そんなところが、家屋丸ごとの保存へと駆り立てるモチベーションになったのかもしれない。

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『きのこ ふわり胞子の舞』—埴沙萠著・ポプラ社
『きのこ ふわり胞子の舞』
『きのこ ふわり胞子の舞』

 キノコが胞子をとばす瞬間だけを集めた写真集。霧やオーロラのようにも見える幻想的な光景が展開する。
 なかには、雨の時に胞子の入っている袋をふくらませ、雨粒が当たることで胞子を吹き上げるというユニークなキノコも。

 これらの写真は、ライトをうしろからあてて撮影するそうで、新鮮なキノコだったら市販の物でも胞子を飛ばす様子を観察することができるという。

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最新刊!歴史系ミュージアム ガイドブック—『親子で楽しむ!歴史体験ミュージアム』発売中!
親子で楽しむ!歴史体験ミュージアム
親子で楽しむ!歴史体験ミュージアム

 博物月報主宰の盛田が執筆しました歴史系ミュージアムの博物館ガイド『親子で楽しむ!歴史体験ミュージアム』が、2012年3月7日より、朝日新聞出版より発売されました。

 再現展示や時代体験などが充実した博物館を、首都圏中心に60館紹介しています。
 とくに江戸時代の長屋や、昭和の商店街、縄文時代のムラなど、時代のワンシーンを細部に至るまでリアルに表現した「再現展示」は、タイムトリップ気分を手軽に味わえるので、来館者にも人気の展示スタイル。

 この本がきっかけとなって、歴史に親しんでもらえれば幸いです。よろしくお願い致します。

『中廊下の住宅』—青木正夫・岡俊江・鈴木義弘著・住まいの図書館出版局
中廊下の住宅
中廊下の住宅

 副題に「明治大正昭和の暮らしを間取りに読む」とあるように、明治維新以後の住宅の変遷を、間取り図を中心に分析している。
 特に興味を引いたのが、炭鉱住宅や国鉄官舎の間取りを年代順に見ていく部分だ。
 例えば明治21年築の官舎と明治30年築の官舎があり、似たような規模の戸建てであるにもかかわらず、この間取りが変化していれば、そこに改善の試みが施されていると考えられる。

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