ヒッチコックの「鳥」気分[蕪島]

 三陸海岸の北部、八戸〜久慈の八戸線が走っているあたりは、観光地としては地味だけれども景色はきれいなところだ。
 八戸線の「鮫」という駅で下車する。駅の「ようこそ鮫へ」と描かれたサメの看板に迎えられ、15分ほど歩くと、郷土資料館にミニ水族館がくっついたような「八戸市水産科学館マリエント」が建ち、海岸には蕪島が浮かんでいる。これが鮫の貴重な観光資源だ。

 周辺の海岸はおだやかで、家族連れが磯遊びなどをしているが、蕪島にだんだん近づいていくにつれ、徐々にウミネコの姿が増えていく。
 島のすぐそばまで来た。気がつくと、まわりじゅうからウミネコに取り囲まれていた。

 それもそのはずで、蕪島は海猫繁殖地として天然記念物に指定されている、まさにウミネコ天下の島。

 島内には神社が一棟建っていて、その神社のほかには岩場ぐらいしかスペースがないような、小振りの島で、1942(昭和17)年から2年がかりで埋め立てられ、現在は陸つづきになっている。

 島に入ると、まさにウミネコの天下。我がもの顔に「ぎゃーぎゃー」と鳴いて騒然とした様相。神社の狛犬もフンだらけだ。

 一応、島には「つくしの岬」とか「前河原」「七福岩」などと名のついたところがあるにはあるのだが、神社の周囲以外は繁殖地を保護するため金網でおおわれていて、入ることはできない。島一周数十m、所要3分ぐらい。ただし、ウミネコが群れているなかを「はい、ごめんなさいヨ」といいながら通っていくので、スリルはある。群れているカラスぐらい迫力のあるものが、公園のドバトぐらいの至近距離で、騒いでいると考えるとわかりやすい。

ウミネコにはふつうのカモメスタイルの親と、茶色い子とがいて、この時期(夏)になると大きさは変わらないのだが、子は甘えた声をだすのが愛らしい。

 フンで汚れた看板があるので、ちょっと読んでみよう。この島は昔から海猫の繁殖地で(中略)7月末には、海猫は飛び立っていっていなくなってしまいます……今日は8月。まだいるぞ、数十羽。いま、私を取り囲んでいる……。ここへ来ようと思ったら、事前にヒッチコックの『鳥』などを見ておくと、きっと人一倍楽しめる。

蕪島
住所 青森県八戸市鮫町
TEL 0178-46-4040(八戸市産業振興部観光課)
入場 自由(ただし犬猫は不可)
入島料 無料
交通 JR八戸線鮫駅より徒歩15分