ミニ火山と池のなかの海[笠山・明神池]

笠山(山頂からの眺め)

 萩は歴史の町として有名だが、自然史的にも興味深いエリアである。
 萩市から山口市にかけては阿武火山群と呼ばれる50あまりもの火山が分布している。萩沖には見島、大島、羽島などの島々が浮かんでいるが、これらがすべて火山なのである。
 なかでも一番若い火山が、萩郊外の海岸に陸続きになってこんもりと盛り上がっている笠山(標高112m)だ。約1万年前に噴火し、「日本一小さい火山」として観光ガイドに紹介されることもある。火山の定義は各種あるので科学的な言い方ではないが、眺めてみると確かに小さい。

笠山(火口) 笠山(火口)

 山頂の展望台からは萩沖の島々や萩市街を一望できる。このままだとただの小山だが、案内板に導かれるままに深さ30mほどのくぼ地に降りていくと、そこが火口で、周囲はスコリア(マグマのしぶき。岩滓)による地層が露出している。
 笠山がまぎれもない火山であることのなによりの証拠だ。

笠山(火口)

 最後の活動が1万年前とはいえ、現在も活火山に指定されていると聞くと、火口にいるだけでなにやらむずむずしてくる。
 が、笠山を噴火させた阿武火山群は、小さな火山が集まる独立単成火山群と呼ばれ、一度噴火して小型の山体をつくった後は同じ火口からは噴火しないので笠山が噴火する可能性は小さいと、展望台のパネルに書いてあった。

明神池

 そして、麓に降りてきて、見逃せないのが、明神池である。
 見た目は日本庭園風。池の中央にしつらえた厳島神社には、風格を感じさせる石橋がかかり、石灯籠が水面に影を落とす。
 池の畔に立つと足元でびちゃびちゃ音がする。
 普通の池ならコイでもがエサをねだりに来るところだが、ここではなんと、エイなのである。エイというのは水際の縁に沿ってヒレをばたつかせて泳ぐクセがあるらしく、水辺にエイヒレをちらつかせながら泳いでいく。岩陰にはイシダイの魚影も見える。

明神池(右端の水辺にエイのヒレが見える) アカエイ@明神池

 この池は地下から海水が出入りし、池の水位も潮の干満に応じて変化する。そのため、マダイやシマイサキ、メジナ、ヒラメ、クサフグ、コノシロなどの魚も目にすることもある。
 そんなわけで海や海水魚の気配を存分に感じることができる。

ボラのジャンプ@明神池 明神池

 この、気配を感じるというのはなかなか楽しい。例えば、ボラ。
 この魚は時折水面で激しくジャンプする。ボチャン!という音がして、彼方を見るともう魚の影も形もない。しばらく(30秒〜1分位)待っているとまた跳び上がるのだが、次にどこに出てくるのかまったく検討がつかないので、穴のないモグラ叩きでもするようなものだ。
 よく見ると護岸にはフジツボが貼り付いている。ささっと、フナムシの影が横切った。水から薄っぺらいものがチラッと一瞬見えた。エイヒレに違いない。

明神池 明神池

 水深は4mあるそうだ。となると、もっとすごいのがいるかも知れない——そう思ってついつい水面に目を凝らす。
 まわりがすべて陸地で囲まれている池なのに、水の中だけは「海」という不思議なアンバランスさ。歴史の町・萩で火口ウォークと海水魚ウォッチングが楽しめるスポットだ。

明神池 明神池 明神池
笠山・明神池
住所 山口県萩市椿東
TEL 0838-25-3139(萩市観光課)
交通 萩バスセンターよりバス20分、越ヶ浜下車。明神池は徒歩すぐ、笠山は徒歩20分
ワンポイント 笠山にはヤブツバキの群生林があり、2〜3月には「萩・椿まつり」を開催。越ヶ浜バス停から群生林までのシャトルバスも運行される。