[感想後記]しらす探検 〜しらすに混じったカニの幼生やタコなどをひたすら探すイベント〜

しらす探検@つむぐ

 去る2013年3月17日にソーシャルスペース「つむぐ」の協力で、しらすに混じったカニの幼生やタコなどをひたすら探す「しらす探検」と題するイベントを行った。

 しらす(ちりめんじゃこ)の混じり物をさがすというイベントは水族館や自然史系博物館などで時折行われており、決して珍しいものではない。
 だが、その手の催しのほとんどは子どもを対象としたもので、大人が時の経つのを忘れてしらすにまみれるという試みはなかなかなかった。
——ならば、自分でやってしまおう、というわけで開催したのがこのイベントだ。

 それにしても、反響の大きさには驚いた。ツイッターで行ったイベントの告知は1000RTを超え、「つむぐ」のサーバは負荷がかかって重くなり、予約はあっという間に埋まった。
 結局、定員10名のところ、二部制にわけて20名の方々の参加があった(ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました)。時代はそんなにもしらす(の中のタコやイカ)を求めていたのだろうか?

しらす探検@つむぐ

 肝心の、混じり物の多いしらすをどこで手に入れるかだが、これは和歌山県の水産加工業者「カネ上」が自由研究用などに小売販売している、無選別ちりめん「チリメンモンスター」を使用した(和歌山県の博物館関係者からご教示いただいた)。

しらす探検@つむぐ

 さらに、しらすに混じっている小魚たちが一体何者なのかを見極めるテキストとして、『チリメンモンスターをさがせ!』(日下部敬之ほか・偕成社)、『チリモン博物誌』(きしわだ自然友の会・幻戯書房)を用いた。
 前者は子どもでも楽しめるフルカラーの絵本タイプ。稚魚などをカード形式で紹介している。後者は解説を充実させた大人向け。
 チリメンモンスター(チリモン)とは、チリメンジャコに混ざっているモンスターという意味で、この2冊の本にも関わっているきしわだ自然資料館(大阪府岸和田市)が、これらの観察を体験イベントとして積極的に取り入れている。

 では、さっそくそのしらすたちを見ていきたい。

しらす探検 〜しらすに混じったカニの幼生やタコなどをひたすら探そう〜

 すでにスプーンひとさじすくった段階でこの状態だ。テンションは否応なく上がる。
 中央の大きな細長い魚はタチウオだ。すぐ上にアジ、その左上にはカワハギの姿が見える。

ヨウジウオ@しらす探検

 ひときわ大きなヨウジウオ。

イソギンポとエソの仲間@しらす探検

 真ん中の3匹のうち、上2匹はイソギンポ、下の右向きの魚はエソの仲間か。

ヒラメとタツノオトシゴ@しらす探検

 ヒラメもいた(左の白い葉のような魚)。
 右はタツノオトシゴ。これはなかなか見つからなかった。今回、総勢20名で約1kgのしらすを用いたが、4匹しか発見できなかった。
 見つけて思わずガッツポーズをとる参加者もいた。前掲書によれば、決して珍しくないらしいのだが、季節にもよるのだろうか。

ギンカガミ@しらす探検

 扁平な腹部は、ギンカガミだろうか。

フグ(下)@しらす探検

 フグの稚魚(下)もいた。小さいながらも背格好や腹の様子は、まぎれもないフグである。

ヤガラ@しらす探検

 関西では高級魚として知られているヤガラ。特徴的な長い喙が稚魚でもはっきり確認できた。
 料亭で吸い物などになって出てくる魚だが、これなど、もうちょっと大きくなってから出会いたかったと思わないでもない。

 なかなか正体がわからない魚たちには、前掲書のほか、きしわだ自然友の会による「チリモン図鑑」が役に立つ。

スズメダイ@しらす探検

 赤っぽい体色と、ダイヤモンドのような銀色に輝く目。発見者曰く「キンメダイかな?」。
 「チリモン図鑑」で調べたところ、スズメダイの稚魚と近似していた。

ハタの仲間@しらす探検

 大きな頭部に、背びれの棘がのびている。写真ではわかりにくいが、腹びれにも同様の棘があった。顔はスズキのようにも見える。
 ハタ類の稚魚にはこのような特徴があるそうなので、ハタの仲間かもしれない。

しらす探検@つむぐ

 観察のポイントとして、黒い紙と白い紙を用意することをおすすめしたい。机や皿の上に置いて見るよりは観察がしやすくなる。さらに写真に撮る場合は、1円玉でも10円玉でも、大きさのわかるものを脇に置いておくといい。

しらす探検@つむぐ

 おもしろいのは参加者によって、より分けた魚たちの並べ方に違いがあることだ。同一種を大きさ順に並べたり、水中の躍動感を再現するように配したり、より小さなものを観察したり、と、参加者の個性がうかがえてくる。

 じつはこのイベントを行うにあたって、少々不安があった。イベント時間を90分としたものの、しらすをより分けて観察するという、基本的に単純・単調な作業である。途中で飽きて間延びしてしまうのではないかと思ったのだ。
 ところが実際にやってみると、あっという間に1時間、2時間と過ぎていく。しらすを前に、無心になって時の経つのを忘れるという感じだ。

 しらすの中にタコなどが混じっているのを見つけたときの心境は多くの人が得々として語るところだ。私は告知文で「しらすの混じり物は人を幸せな気分にしてくれるのかもしれない」と書いたのだが、それに加えて、しらすには人の心をいったん無心の状態にリセットしてくれるという、一種のリフレッシュ効果(?)があるのかも知れない。

しらす探検@つむぐ

 この小魚のほかにも、カニ・エビ・シャコの幼生が大量にまじっている。参加者のひとりが「どんな小さいものにも全部目があるね」と言っていたのが印象に残った。我々が何気なく食べているシラスにも、これだけ多くの(選別ではじかれてしまった)生物がいるのだ。
 そして、このような数え切れないくらいの生命を生み出す「海」という存在についても、考えさせられる。

 大人がやる「しらすの混じり物さがし」は、膨大な数の生物の残滓に向き合い、生命の深淵というものを意識させられるイベントでもあるのだ。

★「地球のココロ @nifty」でも記事にしていただきました ⇒ シラスに混じった生物、チリメンモンスターを探そう