真夏でも雪に埋もれた博物館[新潟県立歴史博物館]

新潟県立歴史博物館

日本中を節電の嵐が吹き荒れた今夏もまもなく終わろうとしている。東日本では残暑が最後の猛威をふるっている昨今だが、こんな夏にも雪に埋もれた博物館があるという。

新潟県長岡市にある新潟県立歴史博物館がそれだ。長岡駅前からバスに乗ると、35分かかって博物館以外は何もないような場所に連れて行かれる。館内のスペースは相当広そうだ。入館券を買い、誘導されるがままに「新潟県のあゆみ」のコーナーへ。古代・中世・近世・近現代と順を追って、新潟の歴史や産物が説明されている。ここまでは公立の歴史系博物館によくある光景だ。


新潟県立歴史博物館

このコーナーが終わると雪洞のようなエントランスがある。次なる「雪とくらし」コーナーへのプロローグだ。ルートに沿っていくと、ことのほか薄暗い。「節電中かな?」と思ってしまうがそうではない。これこそが、軒までの雪に埋もれ薄暗くなった「雪国の町」の再現展示なのだ。上の写真、通路をはさんで左側に雪が迫っているのがおわかりだろうか?

上越市高田は、家屋の軒をアーケードのように迫り出して冬期の通路にする「雁木」発祥の地としても知られている。ここでは文字通り雪に埋もれて生活しなければならない、雁木通りの商店街の様子を実物大で再現しているのだ。

新潟県立歴史博物館

時代設定は昭和30年代初頭だという。商店街として荒物・雑貨屋、一文店(駄菓子屋)、下駄屋が店舗内の細部にわたって再現されているが、いずれもが薄暗い。ぽつんと吊るされた白熱電球が豪雪地帯の生活を物語っている。
雑貨屋の店内に入ると藁のにおいがした。たぶん再現されていないのは寒さだけなのだろう。

新潟県立歴史博物館

で、この壁のようになっている雪は一体どれだけ積もっているのかということは、階段をのぼって2階に行けばわかる。
今度は一面真っ白な世界だ。軒すれすれまでに雪が積もり、皆屋根の雪下ろしに余念がない。テープによる人々の会話が館内に響く。ともかくも雪下ろし関係だけで、一日の3分の1ほどが潰れてしまうそうだ。

新潟県立歴史博物館

このジオラマを囲むように「雪国のくらし」の資料展示がある。
江戸時代の長岡藩士・飯島文常によって描かれた『雪之図』の複製が展示されていた。江戸期の長岡での冬の庶民生活を活写したものだが、昔も今も、雪と向き合い、雪に埋もれて暮らしてきたことがよくわかる。

新潟県立歴史博物館

昭和の戦後期が博物館の収集・展示対象となってから久しいが、新潟で「昭和」の再現展示となると、この豪雪展示になるのだろう。
雪の多い地方でなんでわざわざ雪に埋もれた展示?といぶかる向きもあろうが、同館サイトも「近年は暖冬が進み、あまり雪が降らなくなったので、この再現は貴重」だと力説する。

新潟県立歴史博物館

ついでにいえば、雑貨屋などの店頭は、江戸時代から変わってなかったと思われる藁・竹細工を用いた日用品に加え、粉石鹸や洗濯バサミ、合成洗剤などの新しい生活雑貨も登場し、ちょうど生活様式の変化の時期にあたっている。店先の品揃えからそんなきざしを感じ取るのも、また楽しい(展示品に細かい説明はないが、携帯式の音声ガイド機を受付で無料貸し出ししてくれる)。

新潟県立歴史博物館

同館ではこのほか、縄文人の春夏秋冬をこれまた実物大で再現した「縄文人の世界」コーナーなどがある。いずれも、原寸大ジオラマの次に、資料や出土品のコーナーを配し、取っ付きやすさでは群を抜いている。

惜しむらくは2階の雪下ろしのジオラマが一方向からしか見られないことだ。せっかく立体的に造ってあるのだから、真ん中まで展望フロアを突出させるか、周囲から覗き窓のようなものを設けて、多方向から見たかった気がする。
ともあれ、「新潟で昭和といえばこれだ!」という気合いの入った展示である。

新潟県立歴史博物館
住所 新潟県長岡市関原町1丁目字権現堂2247-2
TEL 0258-47-6130
開館 9:30〜17:00(月曜日と年末休館)
入館料 大人500円、高校〜大学生200円(企画展は別途)
交通 JR上越線長岡駅よりバス35分、または高速バス長岡ICよりタクシー10分
開館年 2000(平成12)年8月1日
ワンポイント 同館では日時を定めて「戦国武将に変身」「ミニチュア縄文土器づくり」などの体験イベントも行っている。「戦国武将に変身」では上杉謙信や直江兼続の鎧(模造品)の試着ができる。