[感想後記]東京工業大学「東工大大岡山キャンパス—その歴史と未来」展

東工大大岡山キャンパス

 東京工業大学の百年記念館(東京都目黒区)で、2010(平成22)年12月3日まで「東工大大岡山キャンパス—その歴史と未来」展が開催されている。
 東工大は来年2011年に創立130周年を迎えるので、これを機にキャンパスの来し方行く末を振り返ろうという趣向のようだ。

東工大百年記念館

 もともと隅田川沿いの蔵前(東京都台東区)にあったキャンパスが、関東大震災後にこの大岡山の地へ移ってきたものの、鉄道で隔てられた3つの飛び地しか得られず、そこから如何に苦労してキャンパスを形成したかという話が切々と綴られている。
 しかしながら、社会背景などを押さえた解説がわかりやすく、同大学や大岡山にゆかりのない人間が見ても「郊外に大学を造る」とはどういうことなのかがわかって、これはこれで興味深い。

東工大百年記念館

 展示のモニターには、用地買収の様子が刻々と時間を追って表示されていく。まるでテトリスのようである。あぁ、そんなところ、積み残しちゃって!

東工大百年記念館

 やっと、飛び地がつながった!でも、また本館脇に未買収用地が。果たしてこの用地は買収できるのであろうか!

東工大百年記念館

 おっ、未買収用地はそのままに、とうとう本館建設工事に着手した。震災復興事業の期限が昭和5年度までと迫っていたからであろう。未買収用地までの距離はわずかに3m。
 このままではキャンパスのど真ん中に長方形の未買収地が出現してしまうことになるのだが、この土地も遂に1935(昭和10)年3月12日、東工大のものとなるのであった。展示パネルに買収完了の日付まで明記してあるところが、キャンパス建設にかける同大学の思い入れを感じさせる。

東工大百年記念館 東工大百年記念館

 実際、1930(昭和5)年には現在地でのキャンパス建設が頓挫しかかり、三鷹に新天地を求めて旅にでることまでをも真剣に検討したというから、よろこびもひとしおであろう。
 筆者はあとで、この未買収地跡を見に行ったが、そこは西へ向かう緩斜面で、現在では普通に校舎が建ち並び、大学側を悩ませたであろう往時の面影はなかった(当たり前だが…)。

東工大百年記念館「地球史」 東工大百年記念館「地球史」

 百年記念館にはこのほか、常設展示として地質や鉱物展示を中心とした「地球史」、建築家で百年記念館を設計した「篠原一男」、真空管開発などについて解説された「電気〜光/通信の先端研究史」など、4つのコーナーが併設されている。

東工大大岡山キャンパス石川台2号館

 さて、そんなわけで東工大には戦前からの校舎が現存しているので、百年記念館でもらったパンフレットを片手にしばしキャンパスを散策する。
 しかし、機能性を重視した建築が多いからなのか、外壁が塗り替えられたりしてしまうとほとんどそれとわからない。左の写真は1938年築の「精密機械研究所」(現・石川台2号館)。築70年以上経っているようには見えなかった。

東工大大岡山キャンパス留学生センター

 右は1931年築の「分析化学教室」(現・留学生センター)。ちょっとノスタルジックな感じで、東京大や京都大などにはこの手の建築が多いが、ここではむしろこういう建物は珍しい。

 キャンパスを歩いていると、上り下りの起伏が思ったよりある。ゆるいスロープになった芝生広場はベビーカーを引く親子連れの姿が目立ち、近所の子どもたちの格好の遊び場になっていた。

東工大大岡山キャンパス

 また、生活道路や鉄道などをかわすためにトンネルや橋などが随所に設けられ、散歩する分には変化に富んでいる。
 土地確保に苦労したという歴史的な遠因もあるのだろう、元ある地形を活かした(活かさざるを得なかった)キャンパスになっている。そのため、歩きながら武蔵野台地の地形を体感できるスポットにもなっているのだ。

東京工業大学百年記念館
住所 東京都目黒区大岡山2-12-1
TEL 03-5734-3340(百年記念館事務室)
開館 10:30〜16:30(原則月〜金曜日開館。臨時休館日あり)
入館料 無料
交通 東急目黒線・大井町線大岡山駅より徒歩1分
ワンポイント 特別展示「東工大大岡山キャンパス—その歴史と未来」は2010年11月4日〜12月3日まで開催。