東北のユーモラスな神々[東北歴史博物館]

東北の神々@東北歴史博物館

仙台と松島の間に位置する多賀城は、奈良時代初期に国府が置かれ、東北経営の拠点となった旧跡だ。その多賀城史跡の中心部付近にたたずむのが、この東北歴史博物館。

総合展示室(常設展示)は、旧石器・縄文から古墳時代、多賀城の歴史、近世、近現代からなる。その時代のエポックメーキングな遺跡や史料が、実物やレプリカ、ジオラマなどで再現されているので、宮城を中心とした東北の歴史を大づかみに把握するのに好都合だ。

大塚山古墳埋葬部@東北歴史博物館

入ってすぐの所に縄文時代のジオラマ。動いたりする派手さはないが、イヌがわんわん吠えたりして、縄文時代の夕暮れを彷彿とさせる。

上の写真は会津・大塚山古墳の埋葬部の再現模型。
会津と言えば若松城とか戊辰戦争が真っ先に思い浮かぶが、古墳時代も看過できない。この大塚山古墳は市内のほぼど真ん中にある古墳で、4世紀後半に近畿地方とほぼ同一の規格の元で造られており、文化や政治勢力の伝播を推察する上で興味深い史跡だ。墳丘には丸太材を二つ割りにした長さ8.8mと6.5mの2つの棺が挿入されていた。

これと似たようなものをどこかで見たような気がして、ずっと考えていたのだが、秋葉原のショーウィンドウで見た、某アニメの「エントリープラグ」のフィギュアであった……。

東北歴史博物館

さて、場所が場所だけに多賀城関連の展示も見逃せない。奈良時代に置かれた国府は南北朝時代まで機能していたが、当時の文書記録は少なく、出土した木簡や漆紙文書からわずかに推し量るだけだという。
しかもこの「漆紙文書」というのは保管のために残されたものではなく、反故(不要になった紙)を漆容器のフタなどに利用して、その結果、漆の作用によって腐食を免れたものだ。

当時の反故なのだから、たいしたことが書いてあるはずもなく、今でいう「納品書」や「出張経費の精算」のようなものであろう。だが、こんなものでも年号などが特定できることがある。それはその時期に多賀城が行政機関として機能していた証拠になる。

漆紙文書@東北歴史博物館

東北経営の前線基地だった多賀城は蝦夷(エミシ)の襲撃で焼失したこともあり、多賀城の機能していた時期を特定できる「漆紙文書」の出土は、『続日本紀』などの記述の裏付けにもなる貴重な歴史的証拠というわけだ。

現在でも、旧家の襖などには幕末の行政文書や手紙などが下張りで使われていることがあって、解体作業の際、思いもかけぬ発見があるというが、これは1000年以上昔の反故である。当時の人も、後世こんな形で歴史資料になるとは思ってもみなかったろう。

東北歴史博物館 東北歴史博物館

東北らしさといえば、総合展示室「村におけるワラの神々」とテーマ展示室「カマ神」のコーナーに尽きる。
前者は、東北地方で行事の際に祀られるワラで作った神々を紹介したもの。人が着用するナマハゲ型(ヤマハゲ、アマハゲといったバージョンがある)や、辻や田に立てるものなど、各地に伝わるさまざまな神々がひしめいている。

東北歴史博物館 東北歴史博物館

いかにも魔除けといった感じの雄々しいものもあるが、なかには、どう見ても近所のおじさんにしか見えない、親しみやすい神様もいたりして、おもわず笑いがこみ上げてくる。

東北歴史博物館 東北歴史博物館

後者「カマ神」は、民家のカマドの近くに祀られた粘土や木で作った面のこと。宮城県と岩手県南部で見られる信仰だという。面をカマドの神とするのは日本でもこの地域だけの独特のもので、防火や魔除けの信仰があったのだろう。
目をアワビや茶碗で表現したものもあり、いずれも真っ黒にすすけて、土着の神の風貌をしている。

どちらの神様も、仏師のようなプロが造るのではなく、地元の人々(カマ神は左官や大工など)によって造られるので、素朴さや人間臭さを感じさせる造形だ。

東北歴史博物館 東北歴史博物館

近世コーナーには仙台城下のジオラマが、近現代コーナーには1965(昭和40)年頃の「仙台市内の雑貨屋」の実物大展示が鎮座している。
その雑貨屋を覗くと、テレビから1964(昭和39)年の東京オリンピック中継が流れている。戦後期の再現展示ではよくある光景なのだが、アナの声に耳を傾けると、「聖火ランナー、いよいよ仙台へ」とか「宮城県出身の三宅義信選手が重量挙げで金メダル!」という具合に、ところどころにご当地色が出ているのが特徴的だ。

東北歴史博物館

さて、一通りめぐってきて、はたと気づいたのだが、この博物館ではあの方の影が薄い。

そう、青葉城とか仙台駅前の土産物屋とかに必ずおられる、この兜の三日月は天下御免の向こう傷……じゃなかった、三日月兜がシンボルマークで、仙台藩の藩祖といわれるあの方である。

当地に行くと、ついついあの方の功績を辿っただけで、仙台や宮城を知った気になって満足してしまうのだが、ここにはプレ政宗&ポスト政宗の宮城や東北の歴史が、見やすくまとめて展示されている。
多賀城散策はもちろん、仙台観光の前後にもおすすめである。

東北歴史博物館
住所 宮城県多賀城市高崎1-22-1
TEL 022-368-0106
開館 9:30〜17:00(月曜〔祝日の場合は開館〕と年末年始休館)
入館料 常設展 一般400円、高校生以下無料(特別展は別途)
交通 JR東北本線国府多賀城駅より徒歩1分またはJR仙石線多賀城駅より徒歩25分
開館年 1999年10月9日
ワンポイント 野外展示として、宮城県北上町(現・石巻市)から移築・復元した江戸時代中期の民家「今野家住宅」が展示されている。また、併設のレストラン「グリーンゲイブル」では自家製の古代米(黒米)を使用した創作料理を提供している。