[感想後記]都電荒川線貸切りブクブク交換

都電荒川線貸切りブクブク交換

 自分のおすすめの本に名刺をはさんで交換するという、BookとBookの交換会「ブクブク交換」が各地で開かれている。
 テーマにあわせて本を持参し、おすすめの理由を参加者が順番にプレゼン。最後に興味を持った本を交換しあうというイベントなのだが、先日2010年7月18日(日)には都電荒川線を1両まるごと貸し切って「都電荒川線貸切りブクブク交換」が行われた。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 集合場所の三ノ輪橋駅に行って、待つことしばし。特製の「ブクブク交換」のヘッドマークをつけた貸切り車両が入線してきた。参加者は24名。乗車率100%という感じで、都電はホームを離れた。
 これから早稲田駅で折り返してまた三ノ輪橋駅に戻ってくるまでの約2時間、車内でおすすめ本のプレゼン&交換会を楽しもうという趣向だ。

 本を2〜3冊持参するということで、今回のテーマは「町」「遊び」「鉄道」。ひとつのテーマで3冊持ってきてもよし、テーマを組み合わせてもよし。
 ちなみに筆者(博物月報主宰)が持参したのは、『ひとり歩きの伊豆箱根富士』(JTB)、『京都おもしろウォッチング』(路上観察学会編・新潮社とんぼの本)、『知られざる鉄道』(けいてつ協會編・JTB)の3冊。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 細長くて揺れる空間はトークにはやや不向きだが、窓を流れる街の景色を眺めながら、おすすめ本について語り合うのは一興だ。鉄道本の魅力を当の電車に揺られながら語ったり、『いつか王子駅で』(堀江敏幸著)を紹介してまもなく、電車が王子駅を通過したりといったおもしろみもある。
 会議室みたいなところで「本について説明しろ」といわれたら、誰だって緊張してしまうだろうが、こういうちょっとした非日常的空間だとトークもまた流暢になる。
 実際、今回初参加の方も多かったのだが、誰が初参加なのかわからないくらい、みなさんプレゼンがうまい。人前で話すのが得意か不得意かということは関係なく、ひとは、好きなものについて話すとき、自然と言葉がでてくるということだろう。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 電車は早稲田駅で数分の休憩をとったあと、折り返し。面影橋を過ぎてほんの一瞬、神田川のみごとな眺めが車窓を満たす。まるで神田川が渓流のようにも見える光景で、その瞬間、車内が緑色に染まったような気がした。ガタンガタン、ゴトンゴトンという音をBGMに、本の紹介は続き、電車はふたたび三ノ輪橋駅に到着。まだしゃべり足りない人のために、とんかつ屋の2階座敷で2次会。こちらも17〜18人が参加するという盛況ぶりだった。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 「ブクブク交換」はイベントプロデューサーのテリー植田氏の発案で、2010年2月に新宿ゴールデン街のバーで開かれた。以後、都内を中心に、京都や札幌、フィレンツェなどでも開催されている。

 現在、お台場のイベントスペース・東京カルチャーカルチャー(東京都江東区)や下北沢のライブカフェ・スローコメディファクトリー(東京都世田谷区)などで、随時行われており、次回は、2010年7月28日(水)に「月刊ブクブク交換」が東京カルチャーカルチャーで開催される。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 このイベントのおもしろいところは、フリーマーケットや異業種交流会的な要素も持ちつつ、フリマや読書感想文では得られない、「人に勧める本をチョイスする楽しみ」「自分のおすすめの本をプレゼンする楽しみ」そして「本を媒介としての交流」などが味わえるところだろうか。学校や図書館などの催しとしても応用がききそうだし、研修などに導入すれば親睦とプレゼン能力の両方を高めることができる(かもしれない)。

都電荒川線貸切りブクブク交換

 筆者は数回「ブクブク交換」に参加しているが、自分の好みの本が交換で手に入った時の喜びはもちろん、普段自分があまり読まないジャンルの本を手にするのもまた得がたい機会だ。そして、自分の持っていった本が好評だったりすると、これもなんか嬉しい。
 「ブクブク交換」は、新たな本の愉しみ方を呈示しているように思われる。