[今日は何の日]ハレー彗星最接近の日

今から108年前。1910(明治43)年のこの日、ふたたびヤツがやってきた。75年ぶりである。
2000年以上にわたって人類に記録され続けてきた彗星であり、最初のうちこそ「戦乱の予兆である」と恐れられていたものの、年を経るごとに人類もだんだんと知恵をつけてきて、これが定期的に太陽系を周回する彗星であるということを見抜いてしまった。

ところが、ならば一安心かというとさにあらずで、こんどは進歩した知恵が「彗星のガスの中に猛毒のシアンが含まれている」「彗星の尾に地球が包まれると生物が死滅する」「空気が5分間なくなる」といった見解や浮説を導き出してしまった。

その結果、世界各地で流言が飛び交い、日本では神社や花柳界が繁盛するというようなことも起こったという。神頼みの神社はともかく、花柳界は「生きているうちに飲み食いしなければ」ということなのだろうが、遊ぶ口実のような気がしないでもない。

そんなわけで、彗星は去っていった。同年5月22日付の東京朝日新聞はかくいう。〈(人類滅亡の迷信は)実に人類の生活を見くびつた話で、何千万年以来人類の棲息所なる地球が、この位のことで破壊したり滅亡したりする位脆いものなら、もう疾くの昔にこつぱ微塵になつて居る筈だ〉。

だが、人類はそのあともまた、「隕石の衝突は地球上で何度も起こった」「恐竜は隕石の衝突で絶滅した」というような知恵をつけてしまい、「地球のそばを小惑星が通過した」といってはニュースになる日々である。ハレー彗星は1986(昭和61)年に再びやってきたあと、次回は2061年である。

情報がなければないなりに、あればあったで騒ぐのは、宇宙という空間に住む者の宿命なのだろうか。