昭和レトロ展示に課せられた新たな役割[北名古屋市歴史民俗資料館]

北名古屋市歴史民俗資料館

 名鉄犬山線西春駅からタクシーに乗り行き先を告げる。およそ5分少々で、目的地についた。だが、外観はどう見ても図書館だ。中に入ってみると、蔵書が並び、カウンターがあり、子どもが絵本をかかえて歩いている。
 中も、どう見ても図書館で、とてもここに歴史民俗資料館なるものがあるような雰囲気ではない。
 しかし、案内に従って2階へ上がっていくと、自動ドアの向こうに突如として昭和の町並みが広がっているのである。


北名古屋市歴史民俗資料館 北名古屋市歴史民俗資料館

北名古屋市歴史民俗資料館 北名古屋市歴史民俗資料館

 北名古屋市歴史民俗資料館。師勝町の郷土資料館としてスタートしたこの施設の大きな特徴は「昭和日常博物館」と自負しているように昭和にマトをしぼった展示になっているということだ。
 「(施設の制約上できないけれども)本当は砂利道にしたかった」と学芸員が語っていた路地には雑貨屋、パン屋などの店先が再現され、古びたホーロー引き看板がずらりと並ぶ。居間をのぞきこむと「1960年7・8月」のカレンダーがかかっている。これは当時使われていた本物だ。

北名古屋市歴史民俗資料館 北名古屋市歴史民俗資料館

 大八車の籠のなかにさりげなく放り込まれた新聞の日付は「昭和42年11月12日」。「佐藤首相、きょう訪米」という見出しが躍り、全学連が3500人を動員してこれを阻止せんとしている、と記事は伝えている。もちろんこれも本物の新聞であり、収蔵品の豊富さと、細部のディテールの正確さを見せつけている。
 資料館の脇には古いピアノなどが未整備の状態で置かれ、これからもまだまだ収蔵資料は増えていきそうな様子である。

北名古屋市歴史民俗資料館

 同館は最初から昭和を意識して設けられた資料館ではない。本業(?)は地元の農機具、養蚕の道具などの民俗資料の収集である。しかし、取り壊される旧家から昭和の日用品がゴミとして運び出され、捨てられることに疑問を感じたという。
 捨てられるべき消耗品、それは、廃品と紙一重であるが、一点一点が積み重なり時代を象徴する一群となったとき、かけがえのない文化財として認知することができる(北名古屋市ホームページより)という狙いのもと、昭和の日常的なものを精力的に収集するようになったのだ。

北名古屋市歴史民俗資料館

 さて、この手の施設の活用方法といえば、小学校の社会科見学で子どもたちに昔の暮らしをみせるというのがほとんどであろうが、この資料館では、老人ホームのお年寄りたちに昔の玩具や生活用具を手にしてもらい、介護予防や認知症防止に役立てる「思い出ふれあい事業(回想法)」というものを実施している。

 玩具や用具を手にすることで、遊び方や使い方などを思い出し、さらに昔のことを思い出すことで、表情が豊かになる、情緒が安定するといった効果があるという。同館では、ここの資料館とあわせて、明治期の建築物である旧加藤家住宅を活用し、地域ケアの試みを模索している。

 昭和の展示は、ともすると、単に懐かしいというだけで終わってしまいがちだが、北名古屋市歴史民俗資料館はそこにとどまることなく、さらに一歩踏み込んで、自ら新しい役割を切り拓こうとしているように思われた。

北名古屋市歴史民俗資料館
住所 愛知県北名古屋市熊之庄御榊53
TEL 0568-25-3600
開館 9:00〜17:00(月曜、毎月末日、館内整理日など休館)
入館料 無料
交通 名鉄犬山線西春駅よりタクシー5分または徒歩20分
開館年 1990(平成2)年〔1993(平成5)年頃から現在のような昭和展示に重点を置く〕