川を堰き止めた巨大露天風呂[川湯温泉仙人風呂]

川湯温泉

 太平洋に面した和歌山県新宮市から山間へ向かい、人々を世界遺産の熊野本宮大社へと誘う熊野川。熊野本宮大社まであと4〜5kmという所で西へ向かって支流がわかれていく。この支流・大塔川に沿ってたたずむのが川湯温泉だ。
 温泉街を流れる大塔川は川底からお湯が湧いており、河原を掘れば、ちょっとした露天風呂ができることで知られている。

川湯温泉仙人風呂

 これを利用したのが、川を堰き止めた巨大天然露天風呂ともいうべき「川湯温泉仙人風呂」だ。夏は増水するので、冬場だけの名物である。

 場所は、遠くからでも湯気がもうもうと立ち上っているので、すぐわかる。まわりから丸見えなので水着着用がエチケットという感じだ(しかし、すっぽんぽんで入っているオヤヂがいる……。公害とは何かを考えさせられる一幕だ)。
 入湯は無料。河原には男女別の脱衣所が用意されているので、ここで水着に着替えるといい。

川湯温泉仙人風呂
 で、入ってみた感想。まず、脱衣所から湯舟に行くまでが、足の裏が小石で痛い。素足が当然だったといういにしえの時代もあろうが、いかに現代人の足裏が刺激に弱くなっているかを実感、いや痛感。

 湯舟に入ってからも、足裏がちくちくごつごつしているので、移動するのはちょっと大変(湯舟はものすご〜く広大なのだが……)。湧き出している73度の源泉を川の水で40度ほどに調節してぬるくしているというこの温泉の性格上、ちょっと身体を動かすと、「ひゃ〜っ」と叫びたくなる冷水魂か、「あちちち」と飛び上がるほどの熱水に接触し、適温域を見つけるのがなかなか大変である。

朝の川湯温泉
 でもって、適温域にはみんな人が集まってくるので、結局、人の集まっている所が湯加減のよい所ということになる。遠目に見ると、カニでもが群れているみたいに見える。
 深海底には、チムニーと称する熱水噴出孔(一種の海底温泉)があるという。水温が4度前後の深海底において、数百度の熱水が噴出し、そのまわりにはチューブワーム(ゴカイの仲間)やユノハナガニなどがひしめき合っているのであるが、彼らの気分もこんな感じであろうか。

 それにしても、足裏が痛く、湯も熱く且つ冷たい。
 でも、これが正真正銘の露天風呂であり天然温泉なのだ。温泉旅館などにある露天風呂や天然温泉は、正確には露天風風呂天然風温泉というべきなのかもしれない——あちちちっ、また適温域からずれた。

川湯温泉 と、真っ正面の山峰からまん丸の満月が昇ってきた。「ゎあ〜っ」というため息とも感嘆ともつかない声があちこちから上がる。月はみるみる全身をあらわして、湯舟というか川面というか、我々の浸かっている水面にその姿を映した。露天風風呂では味わえないスケールの大きさだった。

川湯温泉仙人風呂
住所 和歌山県田辺市本宮町川湯温泉
TEL 0735-42-0735(熊野本宮観光協会)
開設期間 11月〜2月(2009年度は11月1日〜2月28日)
入浴時間 6:30〜22:00(2009年度)
入湯 無料
交通 JR紀勢本線新宮駅よりバス60分、川湯温泉下車
ワンポイント 近接して「川湯温泉公衆浴場」(大人250円)もある。