おくりびとな町[NKエージェント(旧割烹小幡)]

NKエージェント

※2014年9月末日をもって、施設の公開を終了

 久方ぶりに訪れた酒田はすっかり「おくりびと」づいていた。
 ロケ地めぐりにはあんまり興味がないな……と思いつつ、町を歩いていたら、「NKエージェント」の駐車場が。なに?
 映画のヒットで、一大企業になったのかと思ったら、そうではなくて、ロケで使った旧料亭(割烹小幡)がNPOの人たちの努力で公開されているのであった。

NKエージェント駐車場 NKエージェントこと旧割烹小幡

 オリジナルの建物(割烹小幡)は、1926(昭和元)年ごろの築とされ、和洋折衷の3階建て。入館は協力費の名目で100円。たったの100円でいいの?
 館内はセットを再現したりして、結構念入りに作り込まれている。

「社長の部屋」 「社長の部屋」

 3階に再現された「社長の部屋」では、劇中に登場したフグの白子のレプリカが(レプリカ?)。館内は、写真ご自由にどうぞということなので、ここでフグの白子プレイを愉しむこともできる。
 棚の奥からは、社長の奥さんの遺影がほほえむ。

実際に撮影で使われた2階和室部分

 さらに驚くべきことには、2階和室部分。「銭湯のおばちゃん」の納棺シーンに使用された部屋が「どうぞお上がり下さい」とある。乱れた布団が生々しい(あ、死んでいるのか……)。

 ここで、みんなに顔を拭いてもらったりするようなプレイが楽しめるのである!!

階段部分 3階部分 棺桶

 ま、そんな映画の追体験もいいが、昭和初年の和洋折衷料亭の建築というものを、内と外からじっくり眺められるまたとない機会でもある(但し、だしぬけに棺桶が置いてあったりして、ギョッとさせられることもある。困ったことに)。
 急な木造階段は往時を彷彿とさせる。壁はベンガラ? と思ったら、これは映画用に赤く塗ったらしい。

洋館1階部分

 戦後の一時期、ダンスホールとして使われたという洋館の1階部分の造りも興味深い。
 昭和20年代、港町・酒田でのダンスホールである。踊ったのは羽振りのよかった海運業者のお偉いさんだろうか、それとも糸へん金へんの成金か、はたまた中央役人のお接待か——。外は雪だったりしたら、この一角だけ別世界のように見えたことだろう。

 2人連れの主婦があれこれ話している。
「前来た時、この椅子はなかったわね」「まわりに建物が建ったから、ここの(料亭の)庭もずいぶん陽が当たらなくなったわね」——地元の方でリピーターらしい。庭の方をみると、なるほどマンションが料亭を見下ろすように建っている。
「日本って、文化に対する考え方がだめよね」「新幹線のたれ幕下げてるけど、東京が近くなっただけで、自分たちの文化は育つわけじゃないのよね」……。

洋館1階部分
 帰りに酒田市役所の前を通りかかったら、「山形新幹線庄内延伸早期実現」のたれ幕が。なるほど、さっき言っていたのはこれだったのか。

 この「NKエージェント」に来た客を市内の商店街に回遊させる試みもなされていて、商店街で酒田の「んめもの」(うまいもの)の食べ歩きができる「つまみぐい探訪ゾーン」などが設けられている。
 「NKエージェント」を、いや、「旧割烹小幡」を見てきたからだろうか、街の中を歩いていても、崩れかかった土蔵や土壁の民家といったものに目がいく。隣から赤く実った柿が顔を覗かせていて、それだけで絵になるような光景だ。こういう所をのんびり歩くのは最高の贅沢かもしれない。

酒田 おくりびとロケ地

 映画「蝉しぐれ」以来、庄内が映画のロケ地に選ばれることが多く、「庄内映画村」なるものまでオープンした。だが、商店街や地元の人が、自分たちのレベルで自分たちの文化を活用して展開していけば、酒田・鶴岡はまたとない魅力的なスポットになるのではなかろうか。

「おくりびと」ロケ地 NKエージェント(旧割烹小幡)
住所 山形県酒田市日吉町2丁目
TEL 0234-24-2233(酒田観光物産協会)
開館 9:30〜16:30(2009年4月10日より公開。2014年9月末日をもって、施設の公開を終了)
入館料 協力金100円
交通 JR羽越本線酒田駅よりタクシー10分
開館年 1926(昭和元)年ごろ、割烹として開店
ワンポイント 「NKエージェント」の向かいには即身仏で知られる海向寺がある。