どこかズレてる町[黒江の町並み]

kuroe01 JR紀勢本線の海南駅から徒歩20分ほど。黒江の町は、漆器が名産の古い町並みである。
 漆器の直売や体験も兼ねた「黒江ぬりもの館」や「紀州漆器伝統産業会館」、地酒黒牛を作る「名手酒造」などをコアに、格子戸やうだつ、虫籠窓を持つ町屋が所々に残って風情ある町並みを創っている。

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 だが、この町、ノコギリ型にギザギザして、シャギーがあるのである。これはこの町の画像解像度が荒いというわけではなく、こういう土地区画なのだ。

 町並みを、とくに道路と家との境に注目して見てみると、玄関部分が段々にズレているのがわかる。町が少しずつズレているのである。
 なぜこうなったのかということについては諸説あって、川から荷揚げした時の置き場に都合がよかったという説や家相という説もある。

kuroe04 「黒江ぬりもの館」での説明によれば、現在では地形説が有力だという。かいつまんで説明すると、かつて干潟だった黒江の町は土砂の堆積と隆起によって陸地化していくが、周囲に半島があったため、汀(海岸線)が斜めに形成された。
 一方、町の中央には自然にできていた水路(堀川)が江戸時代に堀割として整備されたが、この堀川と汀に平行する小道が直角に交わらず、結果として平行四辺形のような町割りとなった。そこに四角い家を建てた結果、ギザギザの町になったという(左の写真は、黒江ぬりもの館の説明板より)。

kuroe05 現在、黒江の町の一部は昔ながらの町屋が残っているが、それ以外の古くない家々、例えば玄関にクリスマス用のライト・イルミネーションを飾ってしまうような現在風の家でも、敷地の隅はギザっているのだ。そのギザのアップが右の写真。

 まさに黒江のアイデンティティともいえる部分である。家々は新しくなっても、町の記憶はそのまま土地に刻まれているからおもしろい。

黒江の町並み
住所 和歌山県海南市黒江
TEL 073-483-8460(海南市商工観光課)
通行 自由
交通 JR紀勢本線海南駅より徒歩20分
ワンポイント 黒江から15分ほど歩くと和歌山県立自然博物館。紀伊半島の海の多様性がわかる展示がみもの。学芸員の解説パネルも気合いが入っている。