山梨の縄文時代から現代までをたどる[山梨県立博物館]

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2005年に開館した博物館。役行者(えんのぎょうじゃ/山岳修験の開祖)の日本最古の木像(複製)や農村のジオラマ、イノシシの紋様を持つ縄文土器などが展示されている。
新しい博物館なので、外観やエントランスもしゃれているが、デザイン性を重視した設計のせいか、入口や順路が非常にわかりづらいのが難点だ。訪れた時も、博物館の建物の前で入口を探して右往左往する人多数。「←入口」という紙が、葬儀会場の案内のごとく何枚も貼られているのが、この建物の構造上の問題を物語っているように思う。


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常設展示は19のブロックに分かれ、山梨の縄文時代から現代までをたどる。

明治期に生糸取引で財をなし、甲州に電灯や鉄道を引いた財閥関係者を紹介するコーナーは、昔の甲府駅ホームをイメージした造りになっているし、戦時下の生活のコーナーでは、机やイスを並べ、当時の国民学校(小学校)の雰囲気を再現したりと、取っつきやすいように工夫されている。

しかし、一部のコーナーではパネルなどの説明がなく、十数分に1回の映像上映を見ないとわからないようになっているのは問題だ。

例えば、山梨県には地方病とされた日本住血吸虫との凄まじいバトルが明治後期から昭和40年代にかけて展開されている。特に中間宿主である淡水性のミヤイリガイの撲滅作戦など、生態系保持が叫ばれる一方で鳥インフルエンザなどの新しい病原体が話題になっている昨今、考えさせられることが多いテーマなのであるが、昔のポスターや治療薬のアンプルといったものだけが展示され、パネルによる説明がほとんどない。

ポスターや写真などが展示コーナーの壁面にアート作品のように装飾され、黒地に白抜きの太い明朝体で「住血吸虫」などと書かれているのを見ると、ここのアートディレクターは10数年ほど前に流行ったアニメにでも影響されたのだろうか、とか思われてくる。

観客は博物館の考えるリズムで展示を見るとは限らず、パネルだけをさっと見て次へ行く人もいるので、映像を見ない人には何の意味もわからない展示というのはどうだろうか。

まわりをきょろきょろとさがしたら、隅にオフセット印刷で作ったとおぼしき展示解説のチラシが置いてあった。博物館側も問題点として認識はしているのだろう。今後、徐々に改善されていくかもしれない。

同館は、自然科学(動物学)と民俗学の双方の視点からニホンオオカミの謎に迫る、「オオカミがいた山」展(2007年)など、秀逸な企画展を手掛けているだけに、この常設展のありようが惜しまれる。

山梨県立博物館
住所 山梨県笛吹市御坂町成田1501-1
TEL 055-261-2631
開館 9:00〜17:00(火曜日、祝日の翌日、休館)
入館料 500円(常設展)
交通 JR中央本線石和温泉駅よりバス10分または徒歩30分
開館年 2005年10月15日