きときとな、ひかりものが名物![魚津水族館]

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 「きときと」とは富山の言葉で新鮮なという意味だそうである。富山の観光ガイドには、当地の海産物を指して「きときと市場」とか「きときと料理」といった言葉が散見される。
 そんな「きときと」を産みだしている富山湾のほとりに魚津水族館は建っている。

 この水族館の売りは「ひかりもの」である。それも、コハダとかサバのことではない。同館の歴史や立地に関連した正真正銘の「ひかりもの」なのだ。

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 同館は、1913(大正2)年に、日本海側で最初の水族館として開館した(現在の建物は3代目)。
 開館の翌年、1914(大正3)年8月13日の夜、嵐による停電で館内が真っ暗になってしまった。その時、飼育していたマツカサウオが発光しているのが発見されたのだ。
 マツカサウオは太平洋岸を中心に日本で普通に見られる魚で、アゴの下に発光バクテリアを共生させている。これが暗闇で青緑色に光る。エサをおびき寄せるためといわれている。だが、その当時、マツカサウオが発光するとは考えられていなかったので(もっとも漁師たちは知っていたのかもしれないが…)、漆黒の闇の中で乱舞する青緑色に驚いた館員は、確認のため魚津中学校の教諭を呼びにやり、さらに東京帝国大学教授に報告するという騒動になった。
 今日、多くの水族館でマツカサウオを暗がりで飼育し、発光している様子を見せようと努力しているのも、この魚津水族館での嵐の晩のできごとが契機となっているのである。

 もうひとつの「ひかりもの」は、富山湾名物の特別天然記念物、ホタルイカだ。普段は深海に棲息しているが、春の産卵期には浅海にあがってきて、大挙して発光する。発光器は約800〜1000個あり、眼のまわりや腕にも大きめの発光器がついている。この発光は、バクテリアを使ったマツカサウオの場合と異なり、発光物質(ルシフェリン)と発光酵素(ルシフェラーゼ)を作用させるのだという。水族館では、通年飼育は難しく、4〜5月のあいだだけ期間限定の展示になっている。

 この2つの「ひかりもの」が同館の二枚看板といえるのだが、筆者が訪れた時は、どちらもいなかった。ホタルイカは季節限定だから仕方ないとして、館内パンフレットにも記されているマツカサウオもなぜかご不在だった。生き物だから、まぁこういう時もあろうか。
 というわけで、ここのマツカサウオの写真はよその水族館のものである。

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 そのかわり、トヤマエビやベニズワイガニが出迎えてくれた。トヤマエビは水流の関係からなのか、みな同じ方向を向いていて、ちょっと愛らしい。ペンギンの群をみるようである。
 水族館の中央に位置する「海洋水槽」では富山名物のブリが泳ぎ回っている。一般に東日本はシャケ、西日本はブリで新年を祝うと言われている。ここ富山ではシャケも重宝されるので、寒流と暖流がぶつかり合うように、東西両方の文化が混じり合っているわけだ。

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 ところで、この「海洋水槽」には「海中トンネル」が設けられている。
 写真を見てもわかるように、ささやかで何の変哲もないのだが、実はこの「海中トンネル」、日本で最初に造られた物なのだ。現在の建物の開館(1981年)と同時に登場しており、がっしりした造りが時代をうかがわせる。
 今日、各地の水族館で大規模な「海中トンネル」が我が世の春を謳歌しているが、それもすべてはここから始まっているのである。これもマツカサウオ同様、同館は威張っていい…かも知れない。

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 3階には「富山湾海底模型」が展示されており、屋上は展望コーナー。南に立山連峰、北に日本海を一望できる。

 帰りがけに館外のプール水槽を覗くと、巨大淡水魚のイトウが群泳していた。本来、北海道にしか棲息しない北の魚だが、まるでニシキゴイのように野外で悠然と泳いでいて、ちょっと驚かされた。と同時に、この地の冬の厳しさを思った。

魚津水族館
住所 富山県魚津市三ケ1390
TEL 0765-24-4100
開館 9:00〜17:00(3月中旬〜11月末は無休。その他の期間の月曜、祝日の翌日、年末年始休館)
入館料 一般730円、小中学生400円
交通 JR北陸本線魚津駅よりタクシー10分、または富山地方鉄道西魚津駅より徒歩15分
開館年 1913(大正2)年
ワンポイント 2010(平成22)年7月よりJR魚津駅や魚津水族館などに、電動自転車のレンタサイクルステーションが設けられた。水族館や近隣の「魚津埋没林博物館」などの観光に利用できる。問い合わせは魚津市観光協会(TEL 0765-22-2244)。