21世紀にふさわしいエントリー
[下谷七福神]

下谷七福神

 七福神というユニットが生まれたのは室町時代だというが、七福神めぐりが盛んになったのは、なんといっても江戸時代である。
 当時、江戸庶民の手軽なレジャーとして親しまれ、現在に至るまで、東京には「七福神めぐり」のコースが多い。
 そんななかで、もっとも現代にふさわしいのが、JR山手線鴬谷駅から地下鉄東京メトロ三ノ輪駅にかけて展開している「下谷七福神」だ。

飛不動尊のお守り@下谷七福神

 それはなぜかといえば、とにかく寺社のラインナップがタイムリーなのである。
 飛行機の災厄除けに功徳のありそうな空の守り神「飛不動尊」、幼児虐待には子育ての神様「鬼子母神」、デフレ不況には弘法大師作の大黒天を奉る「英信寺」などなど、まさに激動の21世紀を迎えた、今の正月のためにあるような顔ぶれだ。これを今、参拝せずして、何時行くであろうか!?
 というわけで、早速、JR山手線の鴬谷駅北口からスタートしよう。

下谷七福神

◇煩悩の街に屹立す
◆元三島神社(寿老人)
 JR鴬谷駅の北口を出ると右手上に社殿がそびえる。そびえるというより、かさが上がっている感じだ。1階部分はなんと定食屋になっている。
 一瞬、この店の中を通っていくのかと思わされるが、裏へ回るとちゃんと参道がある。
 なお、まわりはラブホテル街。煩悩の多そうな街に屹立している寿老人である。

下谷七福神

◇釈迦の手引きで幼児虐待から更正
◆入谷鬼子母神(福禄寿)
 もともと幼児を虐待する鬼神だったが、児童相談所の、もとい、釈迦の教えによって改心し、現在では子育て・安産の神となったのが「鬼子母神」。
 鬼子母神を奉っている所は各地にあるが、ここ入谷のは、江戸時代中期に狂歌の太田蜀山人が「恐れ入谷の鬼子母神」との名文句を考えて一躍有名になった。「あたり前田のクラッカー」(昭和中期)、「ジダンがじだんだ」(平成)などと同様のセンス。言葉遊びの趣向はたかだか数百年ではそうは変わらないようだ。
 肝心の福禄寿は中国の導士(仙人)をモデルにした人望福徳の神。敷地の右端に一庵を構えて立つ。

下谷七福神

◇弘法大師作の「三面大黒天」
◆英信寺(大黒天)
 正面に大黒天の顔を、右に弁財天、左に毘沙門天の顔を持つ「三面大黒天」を本尊としている浄土宗の名刹。御利益はもちろん商売繁盛。弘法大師の作と伝承されている。
 門前のわずかばかりのスペースには、コマや羽つきのセットが置かれ、自由に遊べるようになっていたところがまた正月らしくていい。子どもどころか大どもも、コマ回しや羽つきに興じている。

下谷七福神

◇神になったたこ八郎
◆法昌寺(毘沙門天)
 勇気授福の神として「毘沙門天」が奉られている法昌寺だが、それに加えて、たこ八郎が「たこ地蔵」となって奉られている。ボクサーからコメディアンを経て、とうとう神様(?)になってしまわれた。
 無病息災を祈願して、お地蔵さまとなって合掌している。

小野照崎神社(下谷七福神コース沿い)

◇創建仁寿2年、学問と芸能の神様
◆小野照崎神社
 法昌寺のななめ向かいにある、学問と芸能を奉った神社。七福神ではないが、戦災をまぬがれたという境内は、ちょっとした風情がある。
 852(仁寿2)年創建という知名度を活かし、「八社参り」という独自の宮参りのチームを立ち上げてアピールしている。そのため、下谷七福神の選からもれているにもかかわらず、境内は参拝客で賑わっていた。

下谷七福神

◇上野弁財天の兄弟分
◆朝日弁財天(弁財天)
 1624(寛永元)年に、上野の弁財天と同時に建立された兄弟分(弁天様だから姉妹か?)。
 兄(姉?)の弁財天は不忍池という広大な湖沼を従えているが、こちらも、小さいながらもコイの泳ぐ池を従えている。
 敷地内は、児童公園になっているので、子ども好きであるらしい。

下谷七福神

◇一夜にして奈良から飛来した本尊
◆飛不動尊(恵比寿神)
 その昔、住職が、本尊をはるばる奈良・大峰山に運んでいったところが、一夜にして江戸まで飛んで帰ってきてしまったという伝承から、その名がついた。現在では空の旅の守り神として、旅行客はもちろん、航空会社関係者からも人気が高い。とくに2001年9月以降は引く手あまたではなかろうか?
 小さい飛行機のついた「飛行護」は500円。

 敷地の傍らには「おみくじの引き方」などという立て札があり、おみくじを続けて引く場合は2時間あいだをおけとか必要な項目だけを見よ。必要な項目がない場合は、全体から判断せよ人生の全体をおみくじから判断するのは危険であるといったようなノウハウが書いてある。2時間に一度更新されるとは知らなんだ。みくじ好きは必読。

下谷七福神

◇布袋尊と一緒にザクをまつる?
◆寿永寺(布袋尊)
 いよいよ七福神めぐりも最後の1つである。布袋尊は本堂へ向かう階段の右脇に鎮座しているのであるが、大きく開けた口のなかに、これでもかといわんばかりにお賽銭が詰め込まれている。まるでカネゴンのようだ。
 社務所にも布袋尊が祀られているのだが、そこにはなぜか布袋尊といっしょにガンダムの「ザク」が奉られている。布袋尊以上にでかい顔をして、布袋尊の前に立ちふさがるように「ザク」のプラモがすっくと立っているのである。御利益は一体なんであろうか?

 かくして、三ノ輪駅へゴール。所要2時間弱ほどのお手軽なコースである。
 都内で有名な七福神としては「隅田川七福神」や「谷中七福神」があり、いずれも江戸時代以来の伝統を誇っている。ここ下谷は、時代がぐっと下って昭和52(1977)年に結成されたもの。健脚でならす江戸時代の人が歩いたら物足りないかも…と思われるほどのコンパクトな七福神だ。
 一般に七福神は正月7日までが開催期間であることが多いが、下谷は「入谷鬼子母神」や「飛不動尊」など、個性的な面々がエントリーされているので、それ以外の季節に歩いてもおもしろいだろう。

 

下谷七福神
元三島神社(寿老人) 東京都台東区根岸1-7-11
入谷鬼子母神(福禄寿) 東京都台東区下谷1-12-16
英信寺(大黒天) 東京都台東区下谷2-5-14
法昌寺(毘沙門天) 東京都台東区下谷2-10-6
朝日弁財天(弁財天) 東京都台東区竜泉1-15-9
飛不動尊(恵比寿神) 東京都台東区竜泉3-11-11
寿永寺(布袋尊) 東京都台東区三の輪1-22-15