[今日は何の日]メガマウス、日本で初確認

メガマウス@マリンワールド海の中道

はるばる海の彼方から博多の干潟にたどりついた1匹の魚が、マリンワールド海の中道の名を世界に轟かせた

1994(平成6)年のこの日11月29日。第2期グランドオープンを前に工事休館中だった、マリンワールド海の中道(福岡市東区)に1本の電話が入った。博多湾の湾奥部に位置する雁ノ巣の砂浜に、3mを越えるサメが漂着しているという。
係員が「イルカを見間違えたか、よくてメジロザメだろう」と思い、確認に行ったところ、これがとんでもないレアものだった。

1976(昭和51)年に新科新属新種のサメとして発見されて以来、当時たった6体しか見つかっていなかった、幻のサメ・メガマウス Megachasma pelagios だったのだ。
しかも、このサメは世界でまだ一例も見つかっていない、メスの個体(全長471cm、体重790kg)だった。

メガマウス@マリンワールド海の中道

プランクトンを採餌するための巨大な口(メガ-マウス)がその名の由来

関係者はすぐにメガマウス学術研究会を発足させ6か国89人の学者が参加して解剖調査やシンポジウムをおこなった。特定の魚だけを取り上げた学術研究会は、日本では1982(昭和57)年のシーラカンス学術調査隊以来だというから、その気合いの入れ方もわかるだろう。

メガマウス@マリンワールド海の中道

マリンワールド海の中道ではさっそくキャラクター化された

同館からすれば、第2期オープンを前にとんでもないお宝がやってきてくれたことになる。
現在でも、この個体は液浸の全身標本となって同館に鎮座している。

メガマウスの全身骨格標本(鴨川シーワールド)

鴨川シーワールドで展示されている、メガマウスの全身骨格標本

その後、メガマウスの発見例は日本各地でもぼちぼちと報告されている。
東海大学海洋科学博物館(静岡市清水区)では、2003(平成15)年にオスが、また2014(平成26)年にはメスが捕獲され、ともに剥製として公開されているほか、鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)は、2018(平成30)年に世界初となるメガマウスの全身骨格標本を公開している。鴨川シーワールドの展示パネルによれば、2018年の時点で、世界で135例、日本で23例の捕獲記録があるという。

油壺マリンパーク

油壺マリンパーク(神奈川県三浦市)には、メガマウス・コーナーがあり、剥製や解剖の映像が公開されている。相模湾で発見されたメスの個体である

2020年の今年も、千葉県の館山沖の定置網に迷い込み、「弱っている様子ではなかったから良かった」と海に返され(朝日新聞2020年6月12日付)、また、沼津港深海水族館(静岡県沼津市)には7月にメガマウスの剥製が登場した。前年1月に沼津市の海岸に打ち上げられたオスの個体を剥製にしたものだという。

1976(昭和51)年にハワイ沖で発見された時、これだけ大きな魚類がそれまで未発見であったことに研究者は大きな衝撃を受けたというが、案外、我々のすぐそばの海を悠々と回遊しているのかもしれない。