[感想後記]下を向いて歩こう/渋谷区ふれあい植物センター「あなたの傍にそっと苔」展

渋谷区ふれあい植物センター「あなたの傍にそっと苔」

都心で見られるコケを取り上げた、渋谷区ふれあい植物センター「あなたの傍にそっと苔」展

都心部で見られるコケにスポットを当てた、企画展「あなたの傍にそっと苔」が、渋谷区ふれあい植物センター(東京都渋谷区)で2020年10月27日〜11月23日の会期で開催された。
都会で見られるコケを実物や写真で紹介し、路傍や木陰にひそやかに広がる世界へ来館者を誘う。


渋谷区ふれあい植物センター

会場には同園周辺のコケを紹介した、「渋谷コケ散歩MAP」も

会場では、植物センター周辺でコケ・ウォッチングをした動画が流れ、「渋谷コケ散歩MAP」なるパネルも展示されている。それによると、近隣だけでも15種類のコケが観察できるそうだ。

意外とたくさん見られるものなのだな、と思ったが、日本で確認されているコケは約1700種もあるという。
で、近隣で見つかる15種類についてはパネルでも解説されているのだが、なかには銅成分を好むため、寺社の銅葺き屋根の下によく生えるものなどもあり、一口に都心と言っても、さまざまな環境があることに気がつかされる。

渋谷区ふれあい植物センター

コケ玉や植栽なども展示されている

会場には、テラリウムのコケ作品も展示されている。
テラリウムとは、密閉されたガラス容器などで植栽する方法のことで、密閉された容器内では水分が循環するため、長期間水を与えずに植物を育てることができるという。

渋谷区ふれあい植物センター

側溝の蓋に生えるコケをイメージしたテラリウム作品

グレーチング(側溝にかける格子状の蓋)に生える都会のコケをイメージしたテラリウムもあった。
側溝の蓋は、そこに溜まっているのが小石か砂利かによって生える苔も異なるという(言われてみれば、そんな気もしてきた)。作品では、そのようなところも再現している。

しかしながら、作品の解説ボードが言うには

残念ながら、街中の苔はテラリウムで育てるのが極めて難しいため
今回は実際には街中で見られないような苔に置き換えて制作しています

とのことだった。

なんとなく、都心に生えるコケなのだから、多少の環境変化にはびくともしない丈夫なコケの集まりなのだろうと思っていたので、これはちょっと意外だった。

渋谷区ふれあい植物センター

よく見かけるゼニゴケにも、さまざまな種類があることを知る

会場の解説シートによれば、街中でよく見かけるコケには、乾燥と湿潤のメリハリを必要とするタイプがよく見られるという。テラリウムは容器内で水分が循環するから、乾期が必要なこの手のタイプは不向きというわけだ。

丈夫だから都心に生えているわけではなく、適材適所で、自分に適する環境を見つけた種が繁茂しているのだ。当たり前と言えば当たり前なのだが、自分の「都心部の生き物」に対する先入観を、ちょっと反省させられた。

渋谷区ふれあい植物センター

熱帯温室ドームの中には、バナナやバオバブなどの姿も見られる

会場の渋谷区ふれあい植物センターは、「日本で一番小さな植物園」をキャッチフレーズにした、熱帯温室ドームを持つ植物園だ。JR渋谷駅東口から10分少々歩き、どう見てもこの先に植物園があるというオーラが全然ないところに突如出現する、熱帯の異世界である。
訪れた時は、バナナの房の先端に花が咲き、シマサンゴアナナスの苞(花の基部の葉)がピンクに色づいていた。

渋谷区ふれあい植物センター

100円の入園料で、緑に囲まれたひとときを過ごせる。2階には無料の給茶コーナーも

いつも、熱帯の異世界を味わえる同館だが、今回は身近な足元の異世界を味わわせてくれた。
帰り道、さっそくガードレールの根元や側溝の脇が気になり、下を向いて歩く。
こういう、異世界を手軽に味わうことができるスポットが、都心のターミナル駅のそこそこ駅近な所にあるというのはありがたい。

渋谷区ふれあい植物センター

通常18時まで開園しているので、夕方訪れても楽しめる

渋谷区ふれあい植物センター
住所 東京都渋谷区東2-25-37
開館 10:00〜18:00(月曜、年末年始休館)
入園料 100円
交通 JR山手線渋谷駅より徒歩12分
開館年 2004(平成16)年4月10日