[Topics]感染症や疫病除けをテーマとした企画展相次ぐ

京都市考古資料館

長岡京から出土した墨書人面土器。京都市考古資料館にて(過去の展示の際に撮影)

2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大で幕を開けた。2月からは博物館などの文化施設も臨時休館や閲覧制限を行い、現在でもそれらの措置を継続している施設が多い。
博物館の展示物には「疫病除け」にまつわる品々が少なからずあることは、すでにふれたが([Topics]博物館に見る、疫病除けのまじない)、各地の博物館でもこれらを積極的に取り上げる企画展示が増えてきた。

福岡市博物館の「やまいとくらし」展

福岡市博物館(福岡市早良区)では特設展示「やまいとくらし」を、2020年7月21日から11月29日まで、3期にわたって開催。江戸時代の天然痘、明治時代のコレラなど、それぞれの時代の対応を取り上げたほか、疫病などの「みえないもの」を可視化して祈願やまじないで対抗した事例の紹介や、疫病と歌舞伎という切り口で取り上げる。

福山市しんいち歴史民俗博物館「厄除け」展

福山市しんいち歴史民俗博物館(広島県福山市)では、2020年9月26日〜12月13日の会期で「厄除け」展を開催。郷土玩具やお守り付きの着物など、厄除けの願いが込められた風習や道具を取り上げるほか、明治から昭和初期にかけて役場が発給した行政文書から、伝染病の発生の様子などをふりかえる。

京都市考古資料館の墨書人面土器展示

京都市考古資料館(京都市上京区)では、企画陳列「古代の祓い」と題して、長岡京から出土した、墨書人面土器を同館1階のエントランスに展示する。期間は2020年8月8日〜9月27日。墨書人面土器とは顔が描かれた土器のことで、災厄を封じ込めて川に流したと考えられている。

マンボウで疫病除け? 和歌山市立博物館

一方、和歌山市立博物館(和歌山市湊本町)では、疫病除けに用いられたマンボウの木版画を展示している(共同通信2020年8月31日付)。同館への寄贈品から見つかったといい、江戸時代後期のものと見られる。
マンボウが疫病除けとされる事例は文献資料では確認されていないとのことで、新たな資料を発掘したことになる。展示は2020年9月30日まで。

疫病退散の祭りや民俗儀礼 千葉県立中央博物館

千葉県立中央博物館(千葉市中央区)でも「ミニトピックス展 疫病退散—コロナ禍の収束を祈って」を開催している。会期は、2020年7月2日〜10月25日。
千葉県内の事例をメインに、疫病退散を起源とする祭りのパネル展示をはじめ、「疱瘡神の詫び証文」などのおふだやお守り、さらには、村の境界に藁細工や大草鞋を掲げる疫病除けの民俗儀礼を紹介する。

いずれも、各館それぞれ資料の活用ぶりがうかがえる。

「辻切り」の展示@千葉県立中央博物館

村の境界に藁で作った大蛇を掲げる、わざわい除けの展示(千葉県立中央博物館常設展示)

現在進行形の現象を取り上げた、浦幌町立博物館と吹田市立博物館

一方、いち早く新型コロナと日常生活に関する企画展にふみきったミュージアムもある。
浦幌町立博物館(北海道浦幌町)では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で激変した日常の資料を集めた「コロナ関係資料」の展示を行っている。展示物を入れ替えつつ、来春まで続ける予定で、「コロナな時代のマスク美術館」も開催している。

また、すでに終了しているが、吹田市立博物館(大阪府吹田市)でも、手作りマスクや、テイクアウトをPRする飲食店の貼り紙、入店制限の案内板、配布された「アベノマスク」など、コロナ関連の地域資料を収集展示したミニ展示「新型コロナと生きる社会」(チラシPDF)を、2020年7月18日〜8月23日の会期で開催した。

両館とも、100年前のスペイン風邪の地域資料がほとんどなかったことから、現在のコロナ禍に際して、積極的に資料収集に取り組んだとしているのが興味深い(朝日新聞2020年8月6日付北海道新聞2020年8月5日付)。

吹田市立博物館

コロナ関連の地域資料の企画展示を行った、吹田市立博物館

現代を知るためのツールとしての博物館

このように今春以降、各地の博物館では、出土品や民俗事例を感染症(疫病)という切り口で取り上げることで、現在起きている現象をとらえたり、また、新型コロナウイルス感染拡大によって、現実に生じている社会や生活の変化を資料によって可視化したりという試みが行われている。

博物館とは単に古代の出土遺物を安置するためだけの場所ではなく、あまたの資料を元に現在起きている出来事をとらえて、それを客観視したり分析したりする手助けの場になりうる。現代を知るためのツールとして活用できる、現在進行形のスポットでもあるのだ。