[Topics]予言型妖怪、各地で「発掘」

肥後国海中の怪(アマビエの図)

SNSで一躍、時の人(?)となったアマビエ。「肥後国海中の怪」(京都大学附属図書館所蔵)より

疫病の流行を予言し、自身の姿を描き写すよう告げる予言型の妖怪が、各地で「発掘」されている。
きっかけは、江戸時代の「アマビエ」という妖怪が、新型コロナウイルス感染症の流行に際して、SNSで話題になったことによる。

「アマビエ」は弘化3年(1846)、肥後国の海に毎晩光る物があり、役人が調べたところ姿を現したとされる妖怪。病が流行するのでその姿を写して人々に見せるように言ったとされるが、摺り物に描かれた、素朴なのか写実的なのかよくわからないその姿が、多くの人の想像力をかき立てたのだろう、SNSには様々なアマビエのイラストが登場した。

予言型の妖怪は各地に伝承がある。このアマビエ・ブームに触発された形で、博物館などが所蔵品をネットなどで公開するケースも見られる。

山梨県立博物館の「ヨゲンノトリ」

山梨県立博物館(ヨゲンノトリ)

加賀国白山に現れたというヨゲンノトリ。「暴瀉病流行日記」より(山梨県立博物館所蔵・頼生文庫)。アマビエの肥後国もそうだが、実際にその地で目撃されたというよりは、もっともらしい土地の名前を借りたとみられている

山梨県立博物館(山梨県笛吹市)では、同館が所蔵する江戸時代後期の文献に登場する鳥「ヨゲンノトリ」を、サイトに特設コーナーを設けて紹介している。

「ヨゲンノトリ」は安政4年(1857)、加賀国白山に現れた、2つの頭を持つ鳥。翌年のコレラ流行を予言し、その姿を朝夕に拝めば難を逃れることができると伝えたとされている。
特設コーナーでは、このほか、疫病の流行にともなう世相も取り上げている。

例えば、甲府代官が疫神に対して退去するように命じた文書や、疱瘡(天然痘)や麻疹を伝染病であると指摘したものの江戸時代の当時は受け入れられなかった医者・橋本伯寿の著書、病気を治すために祈祷をするという怪しげな僧侶の話など、ちょっとした企画展示を見ているかのような気分になる。

同館では、「画像を使用して商品を作りたい」という問い合わせがあるということで、山梨県内の事業者に限って使用料を免除する措置を執った。

新潟県立歴史博物館の「光り物」

新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)では、新潟の福島潟に出現したとされる疫病除けの妖怪「福島潟の光り物」をパネルにしてエントランスに設置した(現在は休館中)。
同館所蔵の摺り物には、〈夜ごとに光り物が出て女の声で人を呼ぶものが現れた。当年より豊作だが、悪風のため多くの人が死ぬと予言する。難を逃れるには、我が姿を朝夕見るべし〉と言ったという詞書きとともに、妖怪が描かれている。

西尾市岩瀬文庫の「姫魚」

「姫魚図」のぬりえ

「姫魚図」のぬりえ(西尾市岩瀬文庫)。ぬりえの作品募集も行われている

一方、充実した古典籍の蔵書で知られる西尾市岩瀬文庫(愛知県西尾市)では、同館所蔵の「姫魚図」の摺り物をサイトで紹介
江戸時代の文政の初め(19世紀初頭)頃、肥前国平戸の浜に「姫魚」(ひめうお)という約4.5~5mほどの奇妙な魚が現れた。姫魚は「コロリ(コレラ)という病気が流行し、多くの人が死ぬが、しかし私の絵を貼っておけば病気は避けられる」と告げたとされる。

同館では〈コロナとたたかうすべての人へ岩瀬文庫からのエールとして、この「姫魚図」を公開します。どうぞご自由にお家に貼ってください〉として、オリジナルと塗り絵バージョンの2タイプを公開。
あわせて、姫魚ぬりえの作品募集を行い、抽選で50名に岩瀬文庫オリジナル「姫魚クリアファイル」を進呈する。応募期間は2020年5月1日~31日、ダウンロードして色を塗った物を、郵便またはメールで応募する。

会津では民芸品「赤べこ」も

赤べこ

福島・会津地方の民芸品「赤べこ」(会津若松市観光課・画像素材より)

また、福島・会津地方の民芸品「赤べこ」には疫病除けの言い伝えがあることから、福島県会津若松市ではイベントの中止で出番がなくなり、倉庫で眠っていた特大「赤べこ」を市役所前に展示した。

京都の代表的な祭りのひとつ、「祇園祭」(2020年は山鉾巡行中止)が疫病除けを祈願した祭りであることからうかがえるように、日本各地には疫病除けにまつわる行事やまじないの品、伝承などが多く伝わっている。

今も昔も、疫病は人々の重大な関心事だったのである。
このような視点から、地域の行事や民芸品などを見返してみるのも、その土地の歴史を理解するいい機会かも知れない。