[感想後記]「博物館」以前の時代の担い手たち/國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち」展

國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち」展

「博物館」登場以前の古物蒐集の担い手たちを紹介する國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち」展。2020年3月15日まで

「博物館」というものを日本人が初めて知ったのは幕末の頃だろう。幕府や各藩が欧米に使節団を派遣するようになり、現地で古物や宝物あるいは最新技術の粋が陳列されている場に足を踏み入れてからのことだ。

もっとも、それ以前の日本では、今日いうところの博物館的なものに誰も興味を示さなかったわけではない。このような古物を蒐集・研究し、そして同人同士で交流しあう人びとのことは「好古家」と呼ばれていた。

國學院大學博物館で、2020年3月15日まで開催されている企画展「古物を守り伝えた人々—好古家たち Antiquarians」は、江戸中期から明治初期にかけて、「博物館」登場以前の時代に古物蒐集の担い手だった好古家の姿を紹介している。

会場では、それら古物蒐集の様相をコレクターごとに振り返る。
各地の奇石を蒐集してまわる「奇石蒐集家」は、勾玉(曲玉)について考察した論考も残されており、自然石だけではなく、化石や石器、勾玉も守備範囲だったのだなということがわかる。

蝦夷探検で知られる松浦武四郎の大首飾り(勾玉や管玉をつないで仕立てた物)や、「仁徳天皇陵石棺図」(写し)なども展示。明治の初め、「仁徳天皇陵」の墳丘の一部が崩れ、内部が露見したとき、それを書き留め記録したのも、好古家的な関心があったればこそだったのだろう。

國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち」展

古墳から出土した埴輪や玉類なども展示されている

彼らは単なる趣味のコレクターとして登場しているわけではない。
幕末〜明治初期、廃仏毀釈などの混乱した社会情勢の中で、古物に文化財としての価値を見いだして、それを保護する動きがさかんになった。地域に於いて、その運動の中心的役割を果たした好古家も数多い。

これらの人々の交流は日本人の間だけにとどまるものではなかった。エドワード・モースやハインリッヒ・フォン・シーボルト(江戸後期に来日した医師シーボルトの次男)の名前も見え、モースが視察に訪れた際に残したスケッチなども展示されている。
そういえば、モースとハインリッヒは大森貝塚でも「ニアミス」をしていたのだなということを思い出す。

先ほど、日本人が「博物館」を知ったのは幕末の頃と書いたが、日本で初めて「博物館」という言葉を書き留めた万延元年遣米使節団・名村五八郎元度の日記『亜行日記』の実物まで展示されていたのには驚いた。

明治政府の体制が整って行くにつれ、各地で博覧会が開かれるようになる。今日の産業見本市と、ミュージアムの展覧会の両方の要素がミックスされたもので、日本の博物館はこの博覧会を下敷きとして、常設展示をする施設を設置する所から始まっていく。
そのようなわけで、この企画展も「文部省博覧会錦絵」が最後に展示されている。

國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち」展

考古ゾーンと神道ゾーンに分かれた常設展示も見応えがある

國學院大學博物館「古物を守り伝えた人々—好古家たち Antiquarians」展
住所 東京都渋谷区東4-10-28
TEL 03-5466-0359
会期 2020年1月25日〜3月15日(2月2、10日休館)
開館時間 10:00〜18:00
入館料 無料
交通 JR山手線渋谷駅より徒歩13分