和洋ほどよくミックスされた鶴岡を体感[致道博物館]

致道博物館

 山形県の日本海側に広がる庄内平野。その中心部に、江戸時代に城下町として発展した鶴岡がある。
 この町には、東北地方に現存する唯一の藩校・致道館や、庄内藩の御用商人の邸宅・旧風間家住宅、明治後期に建築された鶴岡カトリック教会天主堂、大正期の洋館・大宝館など、江戸から明治〜大正に至るまでの建物が目白押しだ。
 庄内地方の主立った歴史的建造物を移築展示している致道博物館も、江戸ものから近代ものまでが点在している。

致道博物館

 明治の初めに洋館を見聞した棟梁たちによって造られた擬洋風建築・旧鶴岡警察署(右写真)。
 当時の棟梁が「洋風の建物とはこんな感じだろうか」と、和風の(神社仏閣などに多い)建築技法で洋館を造ったものだ。そのため、洋風建築ではなく、洋風建築と呼ばれている。
 確かに、近づいていって細部を観察すると和風だ。しかし、引きで見ると洋館という、不思議な造りになっている。

田麦俣の民家@致道博物館

 江戸のものはさておき、なぜ鶴岡に洋モノが多いのかといえば、明治に入っても佐幕色が依然強かったこの地域に、欧化政策で時代が変わったことを見せつける意味があったのだともいう。
 それゆえにこの鶴岡の町は、現在では、和洋がほどよく古色を帯びてミックスされた町になっているのだ。

致道博物館

 藩主の隠居所として建てられた 旧庄内藩主御隠殿には庄内竿や魚拓がずらりと並ぶ。これは藩主の趣味というわけではなく、庄内藩では釣りは武道の鍛錬だったのだ。
 遠出して海釣をすることで、足腰を鍛える狙いがあったのだが、そこは武士の一分。釣り竿をなくすと減俸や懲戒免職になったというから、釣りといえども真剣勝負だったことだろう。
 庄内地方には、今日でも小学生が集団で釣りに行く「釣り遠足」の習慣が残っているそうであるが、そんなルーツがこの御隠殿からもわかろうというもの。

田麦俣の民家@致道博物館

 月山・湯殿山麓に位置する集落・田麦俣(たむぎまた)の多層民家も移築されている。「兜造りの民家」と通称されるように、独特な屋根の形が印象的だ。
 この屋根の形は、養蚕のため採光の必要からこのような形になったという。田麦俣は名だたる豪雪地帯のため、雪除けも考慮しての形だそうだ。
 屋内には、農耕具・民具が展示され、山間部での暮らしぶりをうかがわせる。

致道博物館

 驚かされたのは、旧西田川郡役所(右写真)だ。
 考古資料や戊辰戦争関連、さらに明治期の資料などが随所に展示されているのだが、入って右のコーナーに、酒田の沖に浮かぶ飛島の洞窟遺跡についてのジオラマ展示がある。これが、なんと人骨のほか獣骨や土器片などが洞内で見つかったままの状態で復元展示されているのだ。
 この洞窟からは多くの古人骨が発見されたが、骨が変形した成人骨や乳幼児・女性などの人骨も見つかっており、普通の暮らしの場ではなかったようだ。この洞窟が何らかの隔離や埋葬の場に使われていた可能性がある——そんな説明とともに実物がそこにおられるわけである。レプリカばやりの昨今であるが、遺跡の復元に実物を使ってしまうとはなかなか大胆である。

 このほか、バンドリ(庄内地方で用いられた、荷物を背負う時の背中当て)や漁具が展示された民俗文化財収蔵庫や、国指定名勝にもなっている酒井氏庭園などもあり、鶴岡という町の特徴と古層を体感することができる。

致道博物館
住所 山形県鶴岡市家中新町10-18
TEL 0235-22-1199
開館 9:00〜17:00(12月〜2月は〜16:30。年末年始と12月〜2月の毎週水曜休館)
入館料 一般700円、学生380円、小中学生280円
交通 JR羽越線鶴岡駅よりバス10分、致道博物館前下車後すぐ
ワンポイント 旧庄内藩主御隠殿では酒井氏庭園を眺めながら、抹茶をいただくことができる。また、園内には軽食コーナーもある(いずれも冬期休止)。 ※旧鶴岡警察署は2017年までの予定で、解体修復工事中。