漁業の町らしい「魚への愛着」[海とくらしの史料館]

海とくらしの史料館

剥製がメインの「水のない水族館」。その標本数は日本最大規模という

「ゲゲゲの鬼太郎」ですっかり有名になった鳥取県の境港に、「水のない水族館」を売りにしている施設があるという。そのキャッチコピーからもわかるように、魚介類の剥製を展示している史料館だ。その数、約700種4000点は日本最大規模とのこと。
訪れてみると、酒蔵を改修した施設なので、外観はまったく「海」感がない。「ここでいいんだっけ?」とちょっと不安になる。

だが、一歩中に入ると、これでもかというぐらい魚(の剥製)がひしめいている。

海とくらしの史料館

酒蔵を改修したために、まったく「海」感のない外観をしている

真っ先に目に飛び込んでくる巨大マンボウ(愛称:チョボリン)は、島根県大田市沖の巻き網に入り、地元境港で水揚げされたもので、体長2.8m。そのほかにも、ホホジロザメ(これも「ホオジロウ」と名前がついている)など、巨大剥製が目を引く。

海とくらしの史料館

地元境港で水揚げされたマンボウの剥製。全長2.8m、体重1.15トン

港町だけあって、地元で水揚げされたものが多いようだ。
種類の豊富さはまるで魚類図鑑を眺めるようだが、「大きさがまちまちなのがおもしろい」と海釣りに詳しい同行者が言った。たしかに、魚類図鑑だったら「成魚」の段階を図版にするだろうし、水族館でも飼育しているうちに大きい魚は大きく、小さい魚は小さいなりに成長する。

でもここの展示は、大きくなる魚の若い個体とか、老成して大きくなった個体とか、段階がまちまちだ——つまり水揚げされた時のままなのだ。このギャップというか、アンバランスさは「剥製」ならではのものだろう。
同時に、剥製に特化して海洋生物を見せようというコンセプトは、とても港町らしいと感じた。

海とくらしの史料館

魚類以外にも甲殻類などの標本がある

館内にはハリセンボンが吊り天井状態になった展示もある。季節によっては大量発生し、群れをなして漁網に入ってしまって漁師泣かせだというが、そんなハリセンボンがこれでもかとばかり剥製にされていた。

海とくらしの史料館

落下してきたら怖い、ハリセンボンの吊り天井。館内の展示コーナー「ハリセンボン通り」にて

マンボウに「チョボリン」という愛称がついていたことはさっき触れたが、よくよく見るとクロマグロに「クロキチ」、リュウグウノツカイには「キラリン」などと名前がついている。こういうのは県立博物館などの剥製ではあまり見ない。
漁業の町らしい、「魚への愛着」のあらわれなのだろうと思った。

海とくらしの史料館
住所 鳥取県境港市花町8-1
開館 9:30〜17:00
休館日 火曜日(祝日の時は翌日が休館)、年末年始
入館料 一般400円、小〜高校生100円
交通 JR境線境港駅より徒歩20分
開館年 1994年4月
ワンポイント 史料館の隣にある境台場公園からは、境水道とそこをまたぐ境水道大橋という、境港らしい光景が楽しめる。大橋のたもとを目指して5〜6分歩くと、魚市場(水産物卸売市場)に隣接した「境港水産物直売センター」がある。