『ひとり歩きの金沢 北陸 能登』ほか—JTB

ひとり歩きの金沢北陸能登

 『るるぶ』や『マップル』など、雑誌型の旅行ガイドが主流になっている今日、単行本型のガイドブックは旗色が悪い。なぜならば、年々閉鎖したりオープンしたりする施設があまりにも多く、世の中の動きが急すぎて、単行本型では改訂が追いつかないのだ。出して2年もすれば、あっという間に古くなってしまう可能性がある。
 にもかかわらず、このJTBの単行本型ガイドブック『ひとり歩きシリーズ』は重宝する。それは、このガイドブックが「見る」ことに力点を置いているからだ。

 『るるぶ』や『マップル』では、グループ旅行にも重点を置くため、「みんなで何かする」「みんなで楽しむ」といった視座から解説がなされるのが常だ。
 ところが幸い、この『ひとり歩きシリーズ』では、「ひとり旅」に対するありがたい先入観があるため、博物館や美術館、景勝地、古刹、町並み、ギャラリーといった「見る」施設や行為に重点が置かれている。そして、歴史や文化に関するトピックス的なコラムがその脇を固めて、読み応えのあるものにしている。

ひとり歩きの奈良

 一例をあげれば、たとえば『ひとり歩きの奈良』では、「京都・奈良」として、ビートたけし・きよし、あるいは伸助・竜介のように、つねにナンバー2として語られていた「奈良」を独立させ、平城京という、京都よりもさらに原始的な表情を見せるこの都市の魅力を、仏像や古墳、聖武天皇、奈良の鹿といったコラムを駆使してうまく解説しているのである。

 ところで、「ひとり旅」のイメージがサマになるエリアとそうではないエリアがある。前者の代表例は金沢であろう。ここはこのガイドブックの面目躍如で、北陸に点在する町並みや武家屋敷、古刹を紹介する。途中、泉鏡花や九谷焼、おわら風の盆といったコラムが脇を固める。
 一方、後者は伊豆などであろうが、なまこ壁の町並み散策、東伊豆の景勝地を巡る遊歩道といったトピックスを大きく取り上げ、ドライブ→ペンション→美術館といったファンシー路線とは別の視点を提供している。

 このガイドブックは、実際にひとりで行くのか複数で行くのかといったことには関係がない。旅先で「見て」その風土や歴史に「触れる」という旅をしたい人たちにとって、有益なものであるといえる。
 惜しむらくは、本に取り上げられる地域の広さにムラがある。山陽山陰など、いささか広範すぎて、割愛されたであろう多くの情報がもったいない気もする。