昭和の「原っぱ」や伝統工芸体験も[埼玉県立歴史と民俗の博物館]

埼玉県立歴史と民俗の博物館

歴史のほか、民俗にも重点を置いた解説になっている常設展示室

歴史・民俗・美術を中心とした人文系の総合博物館。大きく、「見る」展示と「体験する」展示の2つに分かれている。
前者の例は常設展。先土器時代から現在までの埼玉の歩みを展示している。圧巻は中世に盛んに造られた「板碑」が立ち並ぶコーナーだ。これは、ほかの博物館ではちょっと見られない。

「板碑」は死者を供養するための石の卒塔婆で、表面に仏像や梵字などが刻まれている。秩父地方が石の産地であることから、埼玉県にも多く見られた。展示されているものは全長5mを超す日本最大級クラスもあり、あたかも巨大なモノリスが佇んでいるようで荘厳だ。撮影禁なので写真は撮れないのだが、こいつら、きっと夜中に共鳴しあって会話しているに違いない——とすら思わせる。

このほか、衣食住に関する資料を展示した「民俗展示室」がある。ひとくちに「埼玉」と言っても、山間部と平野では生活に大きな違いがあり、こと交通や物資の流通が発展していない近代以前においては、その差は大きかった。このコーナーでは、各地のライフスタイルや習俗がよくわかる。
地元の料理として、ホウトウなども展示されている。ホウトウは小麦粉を練ってうどん状にしたもので、山梨の名物料理というイメージだが、埼玉でも食べられていたことを初めて知った。

埼玉県立歴史と民俗の博物館

民俗展示室のホウトウの展示

「体験する」展示としては、「ゆめ体験ひろば」が挙げられる。
博物館でも各種の工芸体験ができる所は多いが、ここは、絞り藍染めハンカチづくり、まが玉づくり、絵巻物づくりなど、予約不要でいつでも体験できるメニューが充実しているのが特徴だ。筆者が訪れた時も、子どもたちで大賑わいだった。
このほか、予約が必要な「特別体験メニュー」もあり、福熊手づくり、藍の絞り染めストール、江戸組紐帯締めなど、本格的な制作ができる。これらはいずれも埼玉県内の伝統工芸や地場産業をベースにしたメニューになっている。

埼玉県立歴史と民俗の博物館

中庭にある「昭和の原っぱ」のコーナーでは、子どもが自由に遊ぶことができる

さらに、昭和30〜40年代の原っぱの光景を再現した「昭和の原っぱ」も、「体験する」展示だろう。土管の置かれた空き地に、赤い丸型の郵便ポストや小型車のスバル360が停まっている。フラフープやメンコ、ビー玉、ベーゴマなどで自由に遊ぶことができるほか、日によっては紙芝居もやってくる。

昭和30年代、都市部の「公園」の多くは未整備だった。児童公園ができたというだけで新聞に取り上げられたほどだ。子どもたちの遊ぶ場所といえば、路地裏か原っぱだった。そんなわけで、この「昭和の原っぱ」にも現代の公園のような大がかりな遊具はない。自分で遊びを考えながら楽しんでほしいという趣向だ。

埼玉県立歴史と民俗の博物館

常設展示は、歴史展示室・美術展示室・民俗展示室から構成されている

埼玉県立歴史と民俗の博物館
住所 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4-219
開館 9:00〜16:30(7〜8月は〜17:00)
休館日 月曜(休日、GWなどは開館)、年末年始
入館料 一般300円、高校・大学生150円、中学生以下無料(企画展・特別展は別料金)
交通 東武野田線大宮公園駅より徒歩5分
開館年 1971年10月、旧埼玉県立博物館として開館。2006年4月に同県岩槻市にある埼玉県立民俗文化センターを統合して現名称となる。この際、岩槻の伝統工芸である雛人形など、民俗展示の充実が図られた。
ワンポイント 博物館がある大宮公園には、小動物園や児童遊園地がある。あわせてまわるとかなりバラエティのある一日が過ごせる。