昭和中期のすぐれた情景描写[昭和のくらし博物館]

昭和くらしの博物館

東急池上線を久が原駅で降り、駅前の「ゆうやけ通り商店街」を歩くこと10分少々。
「え?こんなとこ入っていっていいの?」というような路地——というより、家と家との間——に「博物館」の存在を示す看板が立つ。
近所のお父さんと子どもがキャッチボールをしているわきをすり抜けて、たどり着くのが、木造2階建ての本当の民家をそのまま利用した「昭和のくらし博物館」。

この博物館になっている民家は、政府が1950(昭和25)年に始めた住宅金融公庫の融資を受けて建てられた「公庫住宅」の最初期のもので、1951(昭和26)年の築。生活史研究家の方が、自身の生家を博物館として公開しているものだ。

昭和くらしの博物館

なので、民家園のように移築したものではなく、すーっとまわりの環境に溶け込んで建っている。入っていくにも「おじゃましまーす」という感じ。

急な階段を上がって2階に登ると、丸い傘の白熱灯に、正座して使う背の低い机、隣室には足踏みミシン。畳からそれほど高くない位置にある窓は、現在のフローリング家屋ではお目にかかれない純正な和室である証拠。箪笥には、今や絶滅種となってしまった風邪治療の「吸入器」や、これまた絶滅危惧種の「水枕」などが並ぶ。

1階台所は、のちの改築で流しをステンレス張りにしたものの、形はそのまま。井戸水用と水道水用の蛇口が2つ。台には分厚い一枚板を使用し、流しの高さは当時のサイズなので、やけに低い。今なら調理や洗い物のたびに腰を痛めそうだ。磯野家の専売特許の観がある「丸いちゃぶ台」もここに健在。子どものお茶碗はかつて人気のコメディ時代劇「てなもんや三度笠」の図柄。

年配の来館者のなかには、「なんでこんな珍しくないものを展示しているんだ!」と怒ってしまう人もおられるそうだが、一方で若い世代の来館者からは「おばあちゃんの家みたい!」という歓声。まさにそういう「おばあちゃんの時代」の雰囲気や小道具を保っている。いま一番散逸しつつある時代ゾーンを、フォローしようとしている博物館だ。

昭和のくらし博物館
住所 東京都大田区南久が原2-26-19
入館料 500円
交通 東急多摩川線下丸子駅より徒歩8分/東急池上線久が原駅より徒歩8分