[感想後記]石から広がる意外な展示/青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

会場では真っ先に、アオモリムカシクジラウオの化石がお出迎え。青森市街のど真ん中を流れる堤川の上流で発見された深海魚の化石だ

先日、所用で青森を訪れた際、久しぶりに青森県立郷土館(青森市本町)に立ち寄った。当日は、特別展「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」が開催中だった(会期:2018年9月6日〜10月24日)。
正直、「石ぃ〜?」と、ちょっと地味そうな展示だなと思いながら覗いたのだが…いきなりアオモリムカシクジラウオの化石が鎮座。

1970(昭和45)年に青森市内の1500万年前の地層で発見された深海魚の化石で、2007(平成19)年に世界初のクジラウオ上科の化石として、新属新種(クジラウオ上科アカクジラウオダマシ科)として発表されたものだ。これも確かに石、それも青森の石だ。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

1984(昭和59)年6月30日に落下し、建物を直撃した隕石。落下以来初めて、破片がせいぞろいした

さらに、1984(昭和59)年に、宇宙から落下してきて印刷所の建物に激突していくつかの破片に割れた隕石が、すべてせいぞろいという展示が。国立科学博物館などに分かれて保存されていたものだが、すべてそろうのは落下以来初という。全部で320グラムあり、トタン屋根の塗料が付着しているものもある。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

展示パネルより、隕石の推定落下コース。ボイラーが爆発したかのような大音響がし、屋根のひさしに穴があいていたという

という具合に、端からエピソード満載の「石」が現れた。

ついで、青森には国学者で絵師の平尾魯仙(1808-1880)が、怪異談や珍奇な事物について著した『合浦奇談』という書物が伝わっているが、それらに記された奇石の実物を展示している。
また、「縄文・弥生の石利用」として、石器石斧などがある。
石といわれて、岩石標本のイメージが浮かんでしまったが、展示を見ていくと「確かにこれも石だよなぁ…」と思わせるものが次々と登場してくる。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

江戸時代の書物に博物誌的に記された奇石の実物を展示

その上、地蔵や飢饉供養碑、板碑(供養塔などに用いた石碑)の展示が並ぶ。
いずれもレプリカだが、これも石の利用の一つでもあることは確かだ。それにしても、「どこまで広がるんだこの特別展!」という思いを抱く。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

飢饉供養塔、板碑、地蔵などがレプリカで再現されている

温石(おんじゃく)と呼ばれる、石を温めて布で包んでカイロがわりにする使い方は、古来から各地で行われているが、下北半島のある土地の伝承では、「生きている石か死んでいる石かを見極めて、死んでいる石をオジャク石として身を温めるのに使う」という。生きている石を温めたらはぜてしまうとのことだ。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

お供えが並ぶ子育て地蔵

この展示では、このような、その土地土地の石にまつわる伝承や民俗学の聞き取りの成果が発揮されているように思われた。博物館がそれぞれの土地に必要とされる理由は、こういう、その土地にまつわる情報の集積センターとしての役目もあるからだろう。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

巨石は名所となり、また信仰の対象となった。地域と巨石の関わりを紹介するパネル展示も

もちろん、青森の火山活動やそれにともなう岩石といった、ガチ自然史系の展示もあるのだが、「石」をテーマに(且つ青森しばりで)文系理系のような学問分野を軽々と超えているのが、この特別展の見どころだ。——そう思って歩いていたら、最後に「石とお菓子」と題して、県内の石をモチーフにした菓子が展示されたコーナーが出てきて、「また一本、やられた!」という感じがした。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

「石とお菓子」のコーナー。炭鉱にちなみ石炭や鉱脈を模したもの、泥炭を模したもの、地元の奇石を模したものなどが並ぶ

土産とか名物は,その土地の歴史や風土を象徴しており、岩石や鉱山もその土地の産物であるのだから、それらをイメージした土産の菓子が作られるわけである。
石が我々にとって、どれだけ身近な素材で、いかに日常生活に溶け込んでいるかということも実感させてくれる展示だった。

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展

企画展や特別展に使用する展示室は「大ホール」と呼ばれ、第五十九銀行青森支店として1931(昭和6)年に建築された

青森県立郷土館「コロコロ・STONE—あおもり石ものがたり」展
住所 青森県青森市本町2-8-14
TEL 017-777-1585
会期 2018年9月6日〜10月24日(会期中無休)
開館時間 9:00〜18:00
観覧料 一般500円、高校・大学生240円
交通 JR奥羽本線青森駅より徒歩20分、またはバス停「新町2丁目」下車後徒歩8分