[感想後記]都市の変化を反映する? ツバメの分布/パルテノン多摩 歴史ミュージアム「多摩市ツバメ調査から見た地域」展

パルテノン多摩 歴史ミュージアム「多摩市ツバメ調査から見た地域」展

多摩市で30年ぶりに行われたツバメ調査を比較する企画展示。会期は2018年2月27日まで

多摩センター駅そばのパルテノン多摩 歴史ミュージアム(東京都多摩市)で、企画展「多摩市ツバメ調査から見た地域~30年前の調査とくらべて~」が2018年2月27日までの会期で開催されている。

展示のメインは、多摩ニュータウンの中心的地域である多摩市で2017(平成29)年と1987(昭和62)年に行われたツバメ調査の比較という、地域密着の展示だが、この界隈でかつてイワツバメの放鳥を行っていたことは初めて知った。
1931(昭和6)年に田畑の害獣駆除を期待して、長野県松本市から取り寄せたのだそうだ。1934(昭和9)年に八王子や五日市、青梅で定着したが、多摩では意外に遅く、1965(昭和40)年に聖蹟桜ヶ丘、1975(昭和50)年に永山で確認されたという。

イワツバメは崖地に巣を作るそうで、都市部では橋梁や建物に巣を作る。そのため、普通のツバメがまんべんなく分布しているのに対し、イワツバメは大栗川、乞田川といった、多摩市を流れる河川沿いに営巣している様子が調査結果の地図からよくわかる。
とすると、多摩でイワツバメの定着が遅かったのは、当初、彼らにほどよい天然崖がなく、ニュータウンの開発とともに人工崖が出現したからなのだろうか。実際、自動車道などの橋脚部に営巣している例があるときく。

パルテノン多摩 歴史ミュージアム「多摩市ツバメ調査から見た地域」展

「インスタ映えコーナー」なる記念撮影パネルも。〈ヒナの一羽〉になった気分が味わえるという

興味深かったのは、ツバメの巣がある商店街と巣のない商店街を比べると、空き店舗が少ない商店街の方が営巣が多かったという点だ。人間の気配がする所の方が営巣には都合がよいのだろうか(ヘビなどに襲われるリスクを回避するため、人家のそばに営巣するという説もある)。最近では、ツバメの巣作りの労力を軽減し、子育てに専念してもらおうという「子育て支援」の狙いから人工巣の取り組みもあるそうで、人工巣の作り方や設置方法などが紹介されていた。

今回の調査で確認された種は、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ヒメアマツバメの4種(このうち、ヒメアマツバメだけはスズメ目ツバメ科ではない鳥)。分布地図をみると、なぜかコシアカツバメだけは多摩市諏訪4丁目から5丁目にかけて集住している。

この地区は団地があるそうなので、そこがコシアカツバメ好みなのか、それともこの町内の方々が今回の調査で熱心に自分たちの地区を調べた結果なのかは分からないが、先ほどの商店街のように、ツバメ好みの団地とそうでない団地があるのかもしれない。

30年前の調査に比べ、マンションのより上層階へ営巣した例もあったという。丘陵地帯で起伏のある多摩地区だから、ツバメもマンション上層階への飛翔をそんなに苦にはしなかったのだろうか。先述の河川沿いのイワツバメの分布といい、マンション上層階への進出といい、ツバメの動きにも多摩の地形的特色がよく現れている。

パルテノン多摩 歴史ミュージアム「多摩市ツバメ調査から見た地域」展

ツバメにとって負担が多い「巣作り」を肩代わりして、子育てに専念してもらおうという狙いの「ツバメの人工巣」の取り組みも(写真は、会場で配布されていたチラシより)

ツバメは野鳥なのに人工物へ営巣するなど、割と人間界への依存が高い鳥だ。それ故に30年間のツバメ調査の比較は、単に自然が増えたとか減ったといって一喜一憂するレベルの話ではなく、商店街の栄枯やマンション建築の盛衰など、生活環境の変化にともなう地域の建造物の変化も反映していると思われる。
今回のツバメ調査からは、ほかならぬ我々のこの30年の生活の変化を読み取ることもできるのだろう。

展示そのものは地元向けのローカルな内容だが、ツバメの営巣が都市を反映しているところに着目すると、都市の建築や団地に関心のある人には示唆のある展示ではないだろうか。

パルテノン多摩 歴史ミュージアム「多摩市ツバメ調査から見た地域」展
住所 東京都多摩市落合2-35 パルテノン多摩(多摩市立複合文化施設)内
会期 2017年11月17日〜2018年2月27日
開館時間 10:00〜18:00
観覧料 無料
交通 京王線・小田急線多摩センター駅より徒歩5分