[感想後記]古墳時代の祭祀から神道へ/國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

古代祭祀と神道の起源について、文字資料と考古資料の両面からアプローチする企画展

國學院大學博物館(東京都渋谷区)において、2017年10月14日〜12月10日の会期で、企画展「神道の形成と古代祭祀」が行われている。
「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の世界文化遺産登録記念として開催されたものだが、内容は主に東国の資料を中心としている。

文字資料と考古資料を駆使して、『日本書紀』に「神道」の語が使われた経緯を探り、古墳の出土遺物から古代の祭祀へアプローチし、さらに律令体制以後の祭祀の変容を追う。古墳時代の祭祀をホップ・ステップとして、やがて神道というものが成立していく過程がうかがえる企画展だった。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

720(養老4)年成立の『日本書紀』。日本で初めて「神道」の語を用いた

展示では『日本書紀』〔720(養老4)年成立〕に使われた「神道」という言葉の系譜も紹介しているのだが、神道がもともと仏教語だったということは知らなかった。中国六朝時代、仏教者は、肉体が滅んでも永続する霊魂を「神道」と呼んでいたが、この言葉を日本でも採用したらしい。唐における三教(道教・仏教・儒教)をモデルに、道教に相当する存在として「神道」を位置づけている。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

6世紀・隋の時代に書かれた『三論玄義』に見られる「神道」の語(書物は江戸時代の版)。この仏教語が日本でも採用された背景には、奈良時代に唐へ渡った僧・道慈(?-744)の関与が想定されるという

一方、それを遡ること数世紀前の古墳時代(3〜6世紀)には、祖霊の眠る空間を、様々な財の形代(埴輪)で取り囲む祭祀空間があったことが、古墳の存在からわかる。
この、祖霊へ「財」を納めるというのが、神社への奉幣の祖型なのだろう。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

様々な副葬品を納め、その周りを埴輪で取り囲む古墳。弥生時代後期の西日本各地の葬制を統合することで成立したと考えられている

家屋を塀のような物で囲った「囲形埴輪」(大阪・御廟山古墳)や、網代垣に囲まれた方形区画遺構(群馬・金井下新田遺跡)からは、祭祀を行う際に囲いを作り、そこを「神聖な空間」としたことがうかがえる。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

家屋を囲った「囲形埴輪」(壁面中央のパネル右側)と網代垣に囲まれた方形区画遺構(同左側)からは、囲いによって「神聖な空間」を作り出し、祭祀を行った様子がうかがえる

古墳時代にはすでに遺体安置とは別に副葬品を納める施設をもつものもあるという。沖ノ島遺跡や福島の建鉾山遺跡では、磐座(いわくら:神の宿る場所の意)の周辺に神に捧げられた品々が納められており、〈自然の巨岩が庫に見立てられた結果、これをイワ-クラと呼ぶようになったのかもしれない〉というキャプションは刺激的だ。

祖霊(=神)を祀り、財をかたどった品を納める。「神が降臨する場所」と同時に「宝物庫」が重視され、それが恒常的な宝物庫の出現をうながし、やがて神社の建造物につながっていくと考えることもできるのかもしれない。

國學院大学博物館

國學院大学博物館の常設展示には、磐座を伴う古墳時代の祭祀遺跡「山ノ神遺跡」(奈良県)の復原がある。安山岩の巨石の周辺からは勾玉など数百点の遺物が出土した

7世紀後半の律令体制確立以降、神を祀る施設が整備され、同時に〈神々に供えられた幣帛(へいはく:供物)を収納する神庫(ほくら)が不可欠になっていく〉(展示キャプション)。一方で、引き続き磐座に神への品々を納めていた例や、現在に至るまで本殿をもたない神社も存在している。

このあたり、祀り方の多様な形を許容しているところは非常に興味を引かれる。神様(=祖霊)の数だけ、祀り方があるということなのかもしれない。とすれば、神様、ものすごく多様で寛容でリベラルだよなぁ、と思わされる。

多様と言えば、国家の理論支柱として「道教」を受け入れなかった日本だが、道教的な方術は流入し、〈最新の「技術」として〉受け入れられた。そのことを示す、奈良・平安時代の人形(ひとがた)や祝詞木簡なども展示されている。公の行事で漢文による呪文が唱えられていたというし、安倍晴明などの小説や映画で知られる「急々如律令」などの呪文も道教的なものだ。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

奈良・平安時代に用いられた人形(ひとがた)や祝詞木簡。道教的な呪術とみられる

こうして見ると、時代時代の様々なものを吸収しながら、神道や祭祀というものが形作られてきたことがよくわかる。律令制度の完成で、古墳時代以来の古代祭祀を成文化し、これを格式によって定めた律令国家であるが、今度は8世紀になると、神仏習合によって、新たな変容を受ける。
〈「神道」も、常に変化の中にあるのだ〉という展示キャプションが印象に残った。

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展

平安時代の『年中行事絵巻』(展示は模造)に描かれた神社

國學院大學博物館「神道の形成と古代祭祀」展
特別展サイト http://museum.kokugakuin.ac.jp/special_exhibition/detail/2017_kodai_saishi.html
住所 東京都渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス
会期 2017年10月14日〜12月10日
開館時間 10:00〜18:00
会期中休館日 2017年10月23日、11月20日
入館料 無料
交通 JR山手線渋谷駅より徒歩15分