[感想後記]ソニー歴代のヒット作と失敗作と/ソニービル「It’s a Sony」展 Part-1展示

ソニービル「It's a Sony」展

歴代のソニー製品や、ソニー商品に関連する音楽やゲームなどが集結する「It’s a Sony」展

2017年4月よりビルの解体が始まる東京・銀座のソニービル(1966年竣工)では、解体にともなうサヨナラ展示「It’s a Sony」展が行われている。展示は会期によって、Part-1、Part-2のふたつに分かれる。
歴代のソニー製品が並ぶPart-1展示は、2016年11月12日〜2017年2月12日まで。2017年2月22日〜3月31日はPart-2と題して、「未来のPark」をテーマとしたインスタレーション展示となる。

Part-1展示では、雑誌「POPEYE」とのコラボ展示(「POPEYE」ゆかりの人が思い出のソニー製品を語る)のコーナーを経て、ソニーの歴史のコーナーへ。

まず目に付くのが、敗戦直後の1945(昭和20)年に、井深大(1908-1997)らによって設立された東京通信研究所の〈記念すべき失敗作第1号〉である電気炊飯器(1945年)。木のおひつにアルミ電極を貼り付けたもので〈うまく炊けることのほうがまれ〉だったという(引用は展示解説のパネルより。以下同)。

ソニービル「It's a Sony」展

1945年の敗戦後早々に登場した電気炊飯器。木のおひつにアルミ電極を貼り付けたもの

草創期のコーナーにはこの炊飯器とともに真空管電圧計、鍵盤模写電信機(いずれも1945年)などが並ぶ。鍵盤模写電信機とは何かというと、カタカナをモールス信号化して受信側で紙テープに印字するもの。「お、当時としては画期的!」と思えるのだが、需要が少なかったためお蔵入りしたという。

ソニービル「It's a Sony」展

真空管電圧計(左)と、鍵盤模写電信機(右)。1945年製

そして、隣に鎮座するのが、スーパーヒットした電気ざぶとん(1946年)。〈社員の家族総出でミシンがけなどの下請け作業をしなければならないほど、売れに売れた〉という。エアコンはおろか、石油ストーブもない時代(石油ストーブは昭和30年代に普及)「見た目は地味だが役に立つ」品だったのだろう。

ソニービル「It's a Sony」展

大ヒット商品となった電気ざぶとん(1946年)

1950年には日本で最初のテープレコーダーを登場させる。重さ35kgで電子レンジかコピー機のような風格を漂わせる。フロアをめぐり、時代を追う毎にどんどん小さくなっていって、今ではあなたの掌サイズに。

ソニービル「It's a Sony」展

日本初のテープレコーダーとなるG型テープレコーダー(1950年)


ソニービル「It's a Sony」展

1960年代半ばを過ぎるとカセットテープレコーダーの時代となる。写真中央のTC-100(1966年)は、ソニーのコンパクトカセットテープレコーダー1号機。ガシャンとカセットが飛び出すイジェクト方式が好評だったという。左はアポロ宇宙船の乗組員にも使用されたTC-50(1968年)

先ほどの電気炊飯器のように、失敗作や全然売れなかった製品も展示してあるのは、製品開発の歩みを知る上で興味深い。

1955年製のラジオ、TR-52は、キャビネットの形から「国連ビル」なる愛称まで付いたが、肝心のそのキャビネットが初夏の気温で変形し、売り物にならなくなったという。材質を改良して、日本初のトランジスタラジオTR-55(1955年)、当時世界最小のトランジスタラジオにして本格的輸出製品第1号のTR-63(1957年)などが登場する。

ソニービル「It's a Sony」展

フロントのキャビネットが印象的なラジオ、TR-52(1955年)。だが、そのキャビネットの材質に欠陥があり、売り物にならなかったという


ソニービル「It's a Sony」展

TR-52の材質を改良して作られた日本初のトランジスタラジオTR-55(1955年)


ソニービル「It's a Sony」展

本格的輸出製品となった、世界最小のトランジスタラジオTR-63(1957年)

世界初の直視型ポータブル・トランジスタテレビTV8-301(1960年)は、技術的には画期的だが、当時テレビ(まだ白黒の時代)は据え置き型を買うのが当たり前で、2台目なんて考えられなかった時代だから、〈金持ちか、よほどの物好きしか買ってはくれなかった〉と展示解説のパネルがぼやいている。

ソニービル「It's a Sony」展

商品としては早すぎた世界初。ポータブル・トランジスタテレビTV8-301(1960年)

下から上のフロアへ昇っていくにつれ、展示の年代が新しくなるようになっており、1980-90年代のフロアでは、ステレオWラジカセCFS-W80(1984年)に出会う。デッキを2台搭載したこの手のラジカセはダビングの必需品だったが、当時ソニー製品は高額で手が届かず、アイワ製品を買い求めていたことを思い出した。

ソニービル「It's a Sony」展

ステレオWラジオカセットCFS-W80(1984年)

ふと辺りを見回すと、あちらこちらでしみじみしている人が多い。足早に通り過ぎていった若い世代も、その先のケータイのコーナーでしみじみしている。

ソニービル「It's a Sony」展

ソニーが手掛けた歴代の携帯電話やデジタルカメラなどの展示も

なお、この1966年竣工のビルディング自体も展示のひとつ。フロアを細分して上下階とつなげた〈花びら構造〉と称する構成を体感できる。そういえば、東急ハンズの渋谷店もこれと類似するフロア構成だ。買い物をしながら、あるいはショールームを見ながら上下へと移動していくイメージなのだろう。

ソニービル「It's a Sony」展

ソニービルのフロアは、細分されて上下階とつながる「花びら構造」になっている

展示の最後の方でおひつのようなものに出会う。〈テレビに接続して使うことを前提とした〉テレビサイドPC「VGX-TP1」(2007年)だそうだ。なぜこんな形にしたのかわからないが、いずれにしても本展ではおひつにはじまり、おひつに至るソニーの歩みを俯瞰することができる。

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テレビに接続して使うパソコンVGX-TP1(2007年)。レコーダーにもなるよう作られていた

こうして製品を見ていくと、ソニーは「時代の一歩先を行っている」ということが明らかにわかるが、それゆえに売れなかったり、独自規格で先行して後発に追い抜かれたりした事例も思い起こされる。これらの製品群からは、技術屋魂を重視した、ひとつの企業の足どりを感じ取ることができるだろう。

ソニービル「It's a Sony」展

アイボの普及型や試作機も展示されている

ソニービル「It’s a Sony」展
企画展サイト http://www.sonybuilding.jp/ginzasonypark/event/
住所 東京都中央区銀座5-3-1
会期 Part-1展示 2016年11月12日〜2017年2月12日/Part-2展示 2017年2月22日〜2017年3月31日
開館時間 11:00〜19:00
観覧料 無料
交通 東京メトロ銀座駅B9番出口より徒歩1分
ワンポイント 会場では、ビルの内装を一部除去し、ソニービル竣工当時のオリジナルの柱や床などを見ることができる。1階から5階までを巡ることで、フロアを細分して上下階とつなげた「花びら構造」を体感できる。