貴方も体験、有珠山大噴火[洞爺湖町立火山科学館]


 入ってまず目にとまるのは、車体がぼこぼこになった車だ。火山礫の直撃を受け、フロントガラスは割れ、屋根なども相当へこんでいる。入口にある、火山礫の直撃を受けた町長の公用車に始まり、泥流に押し流された車など、都合3台ほどが展示してある。

 1977(昭和52)年に大噴火を起こした有珠山は、火山灰と軽石で洞爺湖を埋め、温泉街をゴーストタウンにした。住民の避難生活は約1カ月にも及び、そのうえ翌78年には、降り積もった火山灰によって泥流が発生するという2次災害まで起こったという。

 この科学館では、ふりそそいだ火山礫のために割れた窓ガラス、泥流で押し流されたピアノなど被害を示す実物資料のほか、火口原を変貌を示すジオラマや、各地の火山岩、三原山噴火の切り抜きなどが展示してある。

 これなど、一見、粗大ゴミと変わらないように見えるが、例えば左のテレビアンテナには、パイプの部分に細かい凹凸ができている。降り注ぐ火山礫の跡がついたものだという。

 さらに、随所随所にスクリーンやモニターが設置され、「昭和新山のできるまで」とか「噴火・泥流の被害から緑がよみがえるまで」などの映像コーナーがある。これは、各所10分ぐらいずらした時間差で上映され、客を上手に誘導するようにつくられていて、なかなかうまい。

 こちらは、受話器を取ると、噴火の際に北海道放送(HBC)が録音した町の人たちの声が流れる。なお、この電話器は「1F受付」「2F事務」などと書かれていて、昔の役場かなにかの使い回しであろう。限られたものを有効に活用する姿勢がうかがえて好ましい。なんでも新品を買わねば気が済まない最近の観光施設は、この虻田町の「もったいない」精神を見習った方がいい。

 さて、目玉の「体験ホール」では1977年の噴火を追体験できる。映像は、火山の仕組みから始まり、噴火の記録映像へと入る。当時のニュースを活用して臨場感がある。

 その時、気象台は異常な数値を観測していたなどという深刻なナレーションとともに、観光客で賑わう街の映像を流したりする。まさに、「今くるか、今くるか」という感じである。

 と、ズドンドドンという轟音とともに座席が揺れだした。画面には、いっきに噴煙を吹き上げる有珠山の姿が映し出される。

 だが、「揺れ」がなにか違う。地震体験の起震車のような「揺れ」ではなく、上下に小刻みに振動する不思議な「揺れ」だ。どうやら、座席下の大型スピーカーから流れる大音響で振動させているらしい。「有感振動アンプ」なるものを使っているとのことだ。地面の下を何かが走り抜けていっているようだ。これがマグマか、火山の地鳴りにふさわしい。

 画面で、ざーっと火山岩がふりそそいでいたのは、今さっき、ぷらぷら歩いてきた、まさにその温泉街だ。ちょっとぞっとする。

 見学を終えて、牧歌的光景そのものの洞爺湖を眺めているうち、ふと、振り返って有珠山を見る。「私は何百年も前からここにいました」そんな顔をして、赤茶けた山々が鎮座している。なにかほっとしたような気分になった。

(この記事は1999年5月に作成したものです)

洞爺湖町立火山科学館(旧:虻田町立火山科学館)
住所 北海道洞爺湖町洞爺温泉町142-5
TEL 0142-75-2555
開館 9:00〜17:00(年末年始休)
入館料 大人600円、子ども300円
交通 JR室蘭本線洞爺駅よりバス15分「洞爺湖温泉」バスターミナル2階
ワンポイント 同館は2000年の有珠山噴火に伴い、一時休館していたが、2001年4月下旬より再び開館。