5人そろって五色不動![江戸五色不動]

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「目黒」や「目白」という地名は知っているだろうか?多くの人が「もちろん!」と答えるだろう。

では「目青」は?「目黄」は?「目赤」は?

かつて、寛永年間(1624〜44)、徳川幕府は江戸鎮護のため、赤・青・黄・白・黒の5色の不動を設置した。

そう、「目黒」や「目白」は、本来、5つそろって一揃えだったのである。

これら5色は、密教の地・水・火・風・空にあたるともいう(諸説あり)。五色不動めぐりは、七福神めぐりのように、江戸庶民の参詣行楽として人気が高かったそうだ。

今でこそ、目黒や目白が駅名として知られているだけだが、忘れかけられた青、赤、黄は、新世紀の正月にどんな姿で我々を迎えてくれるのであろうか。

ひと気なく凛とした境内

目青不動(教学院)

世田谷区太子堂4-15-1
東急田園都市線三軒茶屋駅より徒歩5分

さて、一口に「五色不動」をめぐるといっても、そうは簡単にめぐらせてはくれない。なにせ江戸市中に散らばっているのである。交通文明が発達した現代でも、じっくり見物して一日、せっせと歩くと半日という行程である。まずは、東急世田谷線の三軒茶屋駅に足を運ぼう。

下高井戸方面に歩き、世田谷線の線路沿いに、まず「青」がいる。

正月というのにじつに閑散としている。自分が「青」であることを、ことさら強調している様子もない。出店も参拝客もない境内がただ広がっているだけだ。

しかし、寂しいという感じはしない。ちりひとつなく掃き清められた境内から、凛とした空気が伝わってきて、やはり正月を迎えているのだなぁと実感させてくれる。

五色唯一の勝ち組!?

目黒不動(瀧泉寺)

目黒区下目黒3-20-26
東急目黒線不動前駅より徒歩12分

参拝を済ませて三軒茶屋駅に戻り、今度は東急田園都市線で渋谷へ。JR山手線に乗り換え、目黒駅。さらに東急目黒線に乗って不動前駅へ行く。

五色のうち、ここだけはひとり勝ちの感がある「目黒不動」である。参道にはずらりと出店が並び、参拝客も押すな押すなの大にぎわいである。

関東最古の不動霊場で、江戸中期建立の前不動堂や天和3(1683)年作の銅製大日如来坐像、国史跡の青木昆陽の墓などがある。その上、ここは「山手七福神」の恵比須にもエントリーされていることもあり、山手七福神の恵比須像のほか、独自に弁財天や毘沙門天を擁立している。

境内に教育委員会の立てた看板しかなかった「目青不動」を沈黙は金と例えるならば、これでもかこれでもかと史跡をPRしている「目黒不動」はさしづめ雄弁は銀

シンボルカラーが効果的

目赤不動(南谷寺)

文京区本駒込1-20-20
東京メトロ南北線本駒込駅より徒歩3分

不動前駅から地下鉄南北線直通電車に乗り、本駒込駅で降りる。いつもは車がうなっている本郷通りも正月はがらんとして、道幅が広く見える。王子方面に歩いていくと左手に「赤」が待っていた。

「南無不動明王」と染め抜かれた赤い幟が立ち並び、石碑には赤い文字で「江戸五色不動 目赤不動尊」と刻まれている。

境内に派手さはないものの、シンボルカラーの「赤」を効果的に使って、参拝客を歓迎するところなど心にくい。前2者の「青」や「黒」とはまた違った印象を与えている。

呉越同舟? なかなか寛容な寺院

目白不動(金乗院)

豊島区高田2-12-39
JR山手線目白駅から徒歩17分 or 都電荒川線学習院下駅より徒歩3分

地下鉄南北線を駒込駅でJR山手線に乗り換え、今度は目白へ。

お次は「白」である。目黒に続き、地名では勝ち組になっているのだから、期待大である。

だが、肝心の不動尊は、境内の脇のコンクリート造りの建物に押し込められていて、気の毒。と思ったら、この本尊は、そもそも文京区にあったのだが、戦災で堂宇が焼失したためにこちらにやってきたのだという。

敷地内には、由井正雪の乱で処刑された「丸橋忠弥」の墓がある。江戸鎮護のための不動尊に、当の幕府転覆を謀った人の墓があるというのは、どうしてなかなかお互い寛容である。

やはりもう江戸は終わった、のか?

目黄不動(永久寺)

台東区三ノ輪2-14-5
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅より徒歩5分

いよいよ五色不動めぐりもフィナーレに近づいた。この「黄」のみ、複数存在しており、江戸川区の最勝寺を「目黄不動」とする説もある。ここでは、前後の交通の便から、三ノ輪の「永久寺」をチョイスした。

学習院下駅から都電荒川線に乗り、ごとごと揺られながら終点・三ノ輪橋駅へ。明治通りに沿って地図を便りに永久寺を探す。さんざんうろうろしたあげく、三ノ輪の駅の近くにあることが判明。あまりにこじんまりとしていて見落としたのだ。

小さな境内に入り、フィナーレを飾る最後のお不動様にお参りを…と思うと、ずいぶん侘びしげなお堂だ。千社札がべたべた貼られ、参拝客も少なくなかったことを示しているものの、よくよく見れば瓦も崩れ掛かり、屋根には枯れ葉が吹き寄せている。

正月に江戸情緒の残り香を探しにきた旅であったが、「やはりもう江戸は終わってしまったのだなぁ」と寂しい気持ちで「黄」を後にしたのだった。

——と、ここまでは実は2001年の話。翌年、その「目黄不動」の前を通りかかったら、なんとリニューアル工事をしているではないか!しかも設計は「TEAM ZOO」(象設計集団)と呼ばれる気鋭の設計者集団だ。見れば、曲線部分が印象的な建物である。合体すれば、ちょうど肩の部分だろうか。

天災や戦災までもが噂される不穏なこのご時世、もしかしたら、五色全部でリニューアルを行い、江戸の守り神として再び立ち上がろうとしているのかも知れない。折しも2003年は、江戸開府400周年。今年は「五色不動」の動向から目が離せない!?

江戸五色不動
目青不動(教学院) 東京都世田谷区太子堂4-15-1
目黒不動(瀧泉寺) 東京都目黒区下目黒3-20-26
目赤不動(南谷寺) 東京都文京区本駒込1-20-20
目白不動(金乗院) 東京都豊島区高田2-12-39
目黄不動(永久寺) 東京都台東区三ノ輪2-14-5