モノレールと同居した水族館[姫路市立水族館]

姫路市立水族館(旧館)

昔々から、ある所に水族館がありました。瀬戸内海や播州平野の魚、水生昆虫、カメなどを展示し、お値段もリーズナブルで、地元の人たちからそれはそれは大切にされておりました。

そんな水族館も年をとってしまいました。施設老朽化と耐震性の面から、2008(平成20)年秋から長期休館となってしまったのです。
「現施設を解体し、そこに新水族館を建設しよう」
町の人たちはそう話し合いました。

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その時です、リーマン・ショックが起こったのは。あたり一面まっくらやみです。とても建設費の見通しが立ちません。

「いったいどうしたらええんじゃ…」
思い悩む町の人たちの目にふととまったものがありました。
「そうだ、これを使おう!」

姫路・旧モノレール駅舎

それは、水族館のそばに寄り添うようにたたずむ、廃止になったモノレールの駅舎だったのです。
「隣接する旧モノレール駅舎も使って、新水族館を建設しよう。現施設にはまだ使える部分があるので、そこも補強してあわせて使おう。これなら、工事費が半分以下におさえられる」
「ある物活用」という考え方です。

姫路市立水族館

こうして、2011(平成23)年7月、ぶじリニューアルオープンを迎え、水族館はふたたび子どもたちの歓声でにぎわう場所となりました。

姫路市立水族館

モノレールは、モノレールは、どこへいったのでしょう?

実はまだ2階にいるのです。

姫路市立水族館/手柄山交流ステーション「モノレール展示室」

というわけで、モノレールと同居した全国でも珍しい水族館となっている。
1階と2階の一部は姫路市立水族館の新館として、川や田んぼなど、淡水系の生物を中心とした展示が展開する。

姫路市立水族館

播磨地方の淡水魚などを展示した「淡水の生き物」水槽。水位が変化して魚がジャンプして上流へ移動する様子が観察できる

そして2階のかつてのプラットホームの部分は、手柄山交流ステーション「モノレール展示室」として、2両のモノレールが安置されている。こちらは入場無料の施設であり、水族館もチケットの半券を提示すれば再入場できるので、水族館とモノレールを行ったり来たりできる。

姫路市立水族館/手柄山交流ステーション「モノレール展示室」

ホームにはパネル展示などのほか、当時の駅名標、時刻表や看板広告などが並ぶ


姫路市立水族館/手柄山交流ステーション「モノレール展示室」

モノレールの車内にも立ち入ることができる

水族館本館の方は海水生物を中心とし、リニューアル前から人気のあったウミガメや瀬戸内海の魚も展示されている。兵庫や岡山の平野部に生息しているヌートリア Myocastor coypus が展示されているのも珍しい。もともと南米原産の齧歯目で、戦前の1940年代前半から戦後の1950年代にかけて毛皮を目的に移入された種だが、放逐されて野生化し、現在では特定外来生物に指定されている。

姫路市立水族館

カタクチイワシ、マイワシ、クロホシイシモチ、マサバ、ドチザメなど、地元の海なじみの魚が泳ぐ「播磨灘大水槽」


姫路市立水族館

外来種ではあるが、たしかに播磨地方の生物ではあるヌートリア


姫路市立水族館

古いプールを改造して造られた屋上のビオトープ

屋上に出ると、ため池ビオトープとジャブジャブ小川がある。これも、使っていない「古いプール」を改造して造られた。一言で「ある物活用」と言っても、現場の困難は相当なものだった。改修工事中に発行された「姫路市立水族館だより」は以下のように書く。

『あるものを活用する』とは、40数年前に立てられた建物の地中やコンクリートの中に埋まった主要な配管や配線を生かしながら、新たな設備を接続して使うと言うことです。これを改修図面に落とす作業は、私たちにとっても、設計会社にとっても、非常に困難なものでした。(中略)
柱の表面をはがしたり、水槽を撤去すると、コンクリート内の鉄筋はボロボロに錆びている場所もあり、海水に40数年さらされていた建物の歴史を垣間見ました。これを補修しながら安全な水族館へと改修するのが、今の私たちに与えられた任務です。

「姫路市立水族館だより=山のうえの魚たち=」第56号(2010年4月)より

このような様々な制約の中で誕生した新・姫路市立水族館は、旧館時代に印象的だった地域密着で丁寧な見せ方が、それらをさらに活かしつつパワーアップしているようだった。

姫路市立水族館

瀬戸内名物、マアナゴの展示。気むずかしい魚で、このように管の中に入ってもらうのはなかなか大変なのだという


姫路市立水族館

ウミガメの甲羅に触れたり、背負ってみることができるコーナーも

例えば、オオサンショウウオの実物大のレプリカは、持ち上げることができるようになっており、ずっしりとしたその重さを体感できる(全長1m、重さ7kgだそうだ)。さらに口の中を覗いてみると、カニや小魚が入っていて、その食性がわかるようになっている。

姫路市立水族館

持ち上げることができるオオサンショウウオの実物大のレプリカ。重さも再現されている


姫路市立水族館

オオサンショウウオが何をエサにしているかは、口の中を覗くとわかる仕掛け

「上から下から水槽」と題する水槽では、下から見ることができるようにして、岩の下などに隠れる性質の生物を観察できるようになっている。
このように見せ方にもいろいろと工夫が施されている。

姫路市立水族館

1階と2階の吹き抜けを利用した「上から下から水槽」。上からのぞくとコイや金魚の姿しかないが…


姫路市立水族館

1階へまわって、下から覗いて見てみると、ナマズやカメなどが隠れていることがわかる

ただし、使える部分をかき集めて造った施設なので、斜面に増改築を繰り返した老舗の温泉旅館みたいになっていて、客の動線が非常に複雑である。初めて行って、館内で順路を迷わなかったら相当なものである。

姫路市立水族館

斜面に位置する新館と本館を回廊がつなぎ、さらに外付けのエレベータを設置。加えて建物の間をぬって駐車場への歩行ルートを確保しているので、動線は複雑を極める

でも、そんな建物の由緒も含めて、「古い建物をどう使っているのか」というリノベーションの視点から眺めてみるのもいい。施設(筐体)は古いが展示手法は最新という斬新なギャップを楽しみたい。

姫路市立水族館

姫路市立水族館。背後の西洋風城郭はこの水族館がある手柄山中央公園のロックガーデン

姫路市立水族館
住所 兵庫県姫路市西延末440 手柄山中央公園内
TEL 079-297-0321
開館 9:00〜17:00(火曜・年末年始休館)
観覧料 大人500円、小中学生200円
交通 JR山陽本線姫路駅よりバス10分または山陽電車手柄駅より徒歩10分
開館年 1966(昭和41)年6月12日。2011(平成23)年7月2日リニューアルオープン
ワンポイント 館内に飲食施設はない。水族館がある手柄山中央公園の一帯は、植物園や広場などがある。