特別天然記念物を食す悦楽?[ホタルイカ]

ホタルイカ

 富山湾の春の風物詩といえば、ホタルイカ漁が挙げられる。普段は深海に棲息しているが、春の産卵期には浅海にあがってきて、大挙して発光する様子が名物になっている。

 ホタルイカは1585(天正13)年、富山県滑川の四歩一屋四郎兵衛が藁台網(ワラで作った定置網の一種)でとったのが初めとされている。地元では長らく、単に小イカと称されてきたが、1905(明治38)年にホタルイカと命名され、学界の注目を集めるようになった。

 発光器は約800〜1000個あり、眼のまわりや腕にも大きめの発光器がついている。この発光は、熱を発しない冷光で、死ぬとまったく光らなくなる。発光物質(ルシフェリン)と発光酵素(ルシフェラーゼ)を作用させるのだという。

 富山県の魚津水族館では、4〜5月のあいだだけ、期間限定で飼育展示している。ホタルイカの寿命は1年とみられ、通年飼育は難しいのだそうだ。

 じつはこのホタルイカ、太平洋側にも分布している。相模湾や駿河湾などでも水揚げされることがあるそうだが、ごく少量なので、市場にはほとんど流通していない。
 それだけにこの富山湾の群棲は驚異的で、富山市から魚津市にかけての海面は「ホタルイカ産卵群遊海面」として特別天然記念物に指定されている。

 ただしホタルイカ自身が特別天然記念物に指定されているわけではないので、我々は酢味噌和えなどで存分にこれを食することができる。

ホタルイカ(Watasenia scintillans)
分類 ツツイカ目ホタルイカモドキ科
生息地 日本海、本州〜四国の太平洋側
見学スポット 魚津水族館(富山県魚津市)、ほたるいかミュージアム(富山県滑川市)で4〜5月のシーズン中のみ飼育展示。滑川市では深夜(午前3時ごろ)に出航してホタルイカ漁の様子を見る「ほたるいか海上観光」も行っている(要予約)。加工品は通年、富山県各地の物産館、道の駅などで販売。